首 (姓)

首（おびと）について

首（おびと）とは、古代日本においてヤマト政権のもとで行われた姓（かばね）の一つで、その主に地方での統治や管理を任されていた人物を指します。この称号は、首長を意味する「大人」（おおひと）に由来し、政治的な地位を持っていたことが示唆されます。

首の由来と歴史的背景

首の語源は、「大人」に起因し、これは当時の権威ある者たちに対する敬称でした。5世紀の遺物として知られる稲荷山古墳出土の鉄剣には「杖刀人の首」という銘文が刻まれており、この時代における「首」の使用例を示しています。また、『日本書紀』においても「赤石郡の縮見屯倉首」や「忍海部造細目」のように記録されており、首の存在が具体的に述べられています。

さらに、同じ書物の中で、允恭天皇の皇后である忍坂大中姫に対して「首や、余、忘れじ」と発言したエピソードがあり、これは「お前」という informal な意味を表していると伝えられています。これらの記述からも「首」が人々の間で使用されていたことが伺えます。

首の種類

首の称号には三つの主なパターンが存在していました。まず一つ目は、部曲名を氏とする地域の統治者（地方伴造）に与えられるもので、例として海部首、山部首、忌部首、赤染部首などが挙げられます。これらは「部」＋「首」という形式で命名されました。

二つ目は、職名を氏とする帰化人（渡来人）系の氏族の者に与えられたもので、西文首、馬飼首、韓鍛冶首などが該当します。この場合の称号も「職掌名」＋「首」形式が取られており、特定の職業や役割に基づいて名付けられたことが伺えます。

最後に三つ目は、屯倉の負担者に与えられた場合です。典型的には大戸部、大鹿首、新家首などがこれに該当します。特に新家首は物部氏の分流に位置し、その歴史的背景から新たに設けられた屯倉を管理する役割を担っていることが特徴的です。この形式は主に6世紀以降に見られるようになりました。

首と氏姓制度の関係

吉田晶の研究によれば、出雲郡には首のパターンが存在し、5世紀以前には臣 - 首 - 部というヒエラルキーが形成されていたことが示されています。『日本書紀』によると、天武天皇の治世下の684年に実施された八色の姓によって、首姓を持つ者の一部は忌寸に賜姓されましたが、大半は旧姓を維持されていました。

奈良時代にも首姓の付与が行われましたが、757年には孝謙天皇が「首」を禁じたため、これに関連する姓は改めて「毗登」に変えられました。その後、770年に聖武天皇が崩御した後に「首」と「史」の区別が曖昧になったため、以前の姓に戻されることになりました。

結論

首（おびと）は古代の重要な社会制度の一部であり、権力と地位を象徴する存在でした。その後の日本の氏姓制度の発展に大きな影響を及ぼし、今日に至るまでの日本の歴史において重要な役割を果たしてきました。そのため、首の存在は日本の古代社会や政治体制を理解する上で欠かせない要素であると言えるでしょう。

もう一度検索