馬仙ベン

馬仙琕（ば せんべん）

馬仙琕（生年不詳 - 516年）は、南朝斉から梁にかけての軍人であり、字は霊馥（れ いふく）と称しました。扶風郡郿県（現在の陝西省眉県一帯）を本貫とします。

生涯

馬仙琕は、馬伯鸞（ば はくらん）の子として生まれました。幼名は「仙婢（せんび）」と名付けられましたが、成長するにつれて「婢」の字がふさわしくないとされ、女偏を玉偏に改めた「琕」の字を用いて仙琕と名乗るようになりました。若い頃からその勇敢さで知られていました。

父の死後、喪に服した仙琕は、礼の規定を超えるほどに痩せ細り、自ら土を背負って墓を築き、松や柏を手植えするなど、その哀しみの深さを示しました。

官界に入ると、郢州（えいしゅう）主簿を初任とし、武騎常侍（ぶきじょうじ）に転じました。その後、小将として斉の安陸王蕭緬（しょう めん）に仕えましたが、蕭緬の死後は明帝に仕えることとなりました。永元年間に蕭遙光（しょう ようこう）や崔慧景（さい けい）の反乱が起こると、仙琕は戦功を重ね、前将軍に進み、龍驤将軍（りゅうじょうしょうぐん）・南汝陰譙二郡太守（なんじょいんしょうにぐんたいしゅ）として赴任しました。寿陽（じゅよう）が北魏によって陥落し、王粛（おうしゅく）が侵攻してくると、仙琕は少数の兵で奮戦し、その功績により寧朔将軍（ねいさくしょうぐん）・豫州（よしゅう）刺史に転じました。

蕭衍（しょうえん）（後の梁の武帝）が起兵すると、仙琕の旧友である姚仲賓（よう ちゅうひん）が説得に訪れましたが、仙琕は姚仲賓を軍中で斬って拒絶しました。蕭衍の軍が東下して新林（しんりん）に達した際、仙琕は江北で兵を擁しながら水運を監督していましたが、建康（けんこう）が陥落すると武装を解除し、蕭衍に帰順しました。その後、母が亡くなると、蕭衍はその貧困を知り、手厚い見舞いを贈りました。仙琕は号泣し、報恩を誓ったと伝えられています。

天監4年（505年）、武帝が北伐を開始すると、仙琕は戦うごとに敵を打ち破り、その勇猛さは三軍の中で最も優れていると評価され、多大な戦功を挙げました。輔国将軍（ほこくしょうぐん）・宋安安蛮二郡太守（そうあんあんばんにぐんたいしゅ）に任じられ、南義陽郡（なんぎようぐん）太守に転じました。山中の少数民族を打ち破り、郡境の治安を回復した功績により、含洭県伯（がんこうけんはく）に封じられ、輔国将軍のまま都督司州諸軍事（ととくししゅうしょぐんじ）・司州刺史に転じ、まもなく貞威将軍（ていいしょうぐん）の号を受けました。

天監7年（508年）、北魏の懸瓠（けんこ）の城民である白早生（はくそうせい）が豫州刺史の司馬悦（しばえつ）を殺害して梁に降伏すると、武帝は仙琕を派遣し、さらに直閤将軍（じきこうしょうぐん）の武会超（ぶ かいちょう）と馬広（ば こう）を応援に送りました。仙琕は楚王城（そおうじょう）に進んで駐屯し、副将の斉苟児（さい くじ）に兵2000をつけて懸瓠を守らせました。しかし、北魏の中山王元英（げんえい）が10万の兵を率いて懸瓠を攻撃すると、仙琕は馬広や武会超らを派遣して三関を守らせましたが、元英は懸瓠を陥落させ、斉苟児を捕らえ、さらに馬広を撃破して捕虜とし、洛陽に送りました。仙琕は救援に間に合わず、武会超らも相次いで撤退し、魏軍が三関を占拠しました。この敗戦の責任を問われ、仙琕は召還され雲騎将軍（うんきしょうぐん）に降格されました。その後、豫章王蕭綜（しょうそう）の下で仁威司馬（じんいしば）となり、天監10年（511年）に蕭綜が雲麾将軍（うんきしょうぐん）・郢州刺史となると、仙琕は雲麾司馬（うんきしば）となり、振遠将軍（しんえんしょうぐん）の号を加えられました。

朐山（くさん）の民が琅邪郡（ろうやぐん）太守の劉晣（りゅう てつ）を殺害して北魏に降伏すると、武帝は仙琕に命じてこれを攻撃させました。北魏の徐州刺史である盧昶（ろ ちょう）が十数万の兵を率いて援軍に駆けつけましたが、仙琕はこれを打ち破りました（朐山の戦い）。建康に凱旋した仙琕は、太子左衛率（たいしさえいそつ）に転じ、爵位は侯に進みました。天監11年（512年）には、持節・督豫北豫霍三州諸軍事（じせつ・とくよほくよかくさんしゅうしょぐんじ）・信武将軍（しんぶしょうぐん）・豫州刺史に転じ、南汝陰郡太守を兼ねました。

合肥（がっぴ）に4年在任し、官職にあるまま亡くなりました。死後、左衛将軍（さえいしょうぐん）の位が追贈され、剛（ごう）と諡されました。子の馬巌夫（ば がんぷ）が後を継ぎました。

伝記資料

『梁書』巻17 列伝第11
『南史』巻26 列伝第16

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