馬部

馬部：漢字の世界を駆けるウマの足跡

漢字を部首で分類したグループの一つに「馬部」があります。康熙字典では214ある部首の中で187番目に位置し、10画の部首の中では最初に登場します。亥集というグループに属しており、動物を象形した部首として、漢字の世界において重要な役割を担っています。

馬の文化史：家畜から交通の象徴へ

「馬」はウマ科の動物を表す字で、その側面図を模した象形文字です。中国では古くから馬は家畜として飼育され、牛、羊、鶏、犬、豚と共に六畜として大切にされてきました。人や物を運ぶ馬車や戦車、農耕など、さまざまな用途に用いられ、人々の生活に深く関わっていました。南北朝時代頃には騎馬民族の南下によって騎乗用の馬も普及し、馬は交通手段として重要な役割を果たすようになりました。

部首としての馬：交通と動物を象徴

馬部は、「馬」を構成要素とする漢字をまとめたものです。この部首は、馬や馬に似た動物に関する漢字を示す意符として機能します。特徴的なのは、形容詞が少ないことです。馬に関する名詞や、馬の動作、人間と馬の関わりを表す動詞が多いのが特徴です。馬が交通手段として重要な役割を果たしていたため、「駅」「駐」など交通に関わる漢字も多く含まれています。

世界に広がる馬部の呼称

部首としての馬は、国や地域によってさまざまな名称で呼ばれています。日本では「うまへん」、中国では「馬字旁」や「馬字底」、韓国では「말마부(mal ma bu)」と呼ばれ、英語圏では「Radical horse」と呼ばれています。

発音と意味：多様な表現

「馬」という字の読み方は、時代や地域によって異なります。

中古音: 広韻では「莫下切」、馬韻、上声。詩韻では馬韻、上声。三十六字母では明母。
現代音: 普通話ではピンインがmǎ、注音はㄇㄚˇ、ウェード式はma3。広東語ではJyutping:maa5、イェール式:ma5。日本語では漢音のバ、呉音のメ、唐音のマ、訓読みでウマ。朝鮮語では音読みが마(ma)、訓読みが말(mal)です。

馬部を構成する漢字例

馬部には多くの漢字が含まれています。画数の少ないものから多いものまで、多様な漢字が馬部を構成しています。例として、以下の漢字が挙げられます。

2画: 馮、馭
3画: 馴、馳
4画: 駄
5画: 駐、駒、駕、駈、駝
6画: 駱
7画: 駿
8画: 騎
10画: 騰、騷（騒）
12画: 驚、驅（駆）、驍、驒
13画: 驛（駅）、驗（験）
16画: 驢
20画: 驫
24画: 䯂
最大画数: 26画（𩧥、驢の俗字）

このように、馬部は漢字の成り立ちや意味を理解する上で重要な役割を果たしています。馬という動物が中国文化に及ぼした影響の深さを示す、興味深い部首と言えるでしょう。簡体字では「马」と表記され、日本では手書きの際に「馬」の「灬」の部分を横棒に略して書く場合があります。これらの点を踏まえることで、漢字学習がより一層深まるものと期待されます。

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