馬防

馬防（ば ぼう）

馬防は、生年不詳ながら後漢時代に活躍した後漢の外戚であり軍人です。字は江平（こうへい）。右扶風茂陵県（うふふうぼりょうけん）を本貫とし、明徳馬皇后（めいとくばこうごう）の兄にあたります。

経歴

馬防は、名将として名高い馬援（ばえん）の次男として生まれました。永平12年（69年）には、弟の馬光（ばこう）と共に黄門侍郎（こうもんじろう）に任じられます。明帝（めいてい）が病に倒れると、馬防は宮中に入り医薬を献上しました。その後、章帝（しょうてい）が即位すると、馬防は中郎将（ちゅうろうしょう）に任じられ、しばらくして城門校尉（じょうもんこうい）に転じました。

建初2年（77年）、金城郡（きんじょうぐん）や隴西郡（ろうさいぐん）で保塞羌（ほさいきょう）が反乱を起こすと、馬防は車騎将軍（しゃきしょうぐん）を代行するよう命じられ、長水校尉（ちょうすいこうい）の耿恭（こうきょう）を副官として、北軍五校（ほくぐんごこう）の兵および諸郡の積射（せきしゃ）の士3万人を率いて反乱の鎮圧に当たりました。軍が冀県（きけん）に到着すると、羌の土豪である布橋（ふきょう）らが臨洮（りんとう）で南部都尉（なんぶとい）を包囲していました。馬防は南部都尉を救出しようとしましたが、臨洮までの道は険阻で大軍を送ることができませんでした。そこで、二人の司馬（しば）に数百騎をつけて、前後軍に分かれて進軍させ、臨洮まで十数里のところに大きな陣営を立てさせました。陣営に幡幟（ばんし）を多く立て、大軍を翌朝に進軍させようと揚言しました。羌の斥候（せっこう）がこれを見て帰還すると、漢兵は大軍であり、とても対抗できないと報告しました。翌朝、鼓を打ち騒ぎながら前進すると、羌兵は驚いて逃走し、漢軍はこれを追撃して破りました。4000人あまりを斬首し、臨洮の包囲を解くことに成功しました。馬防が寛容な方針を明らかにしたため、焼当羌（しょうとうきょう）はみな降伏しましたが、なおも布橋ら2万人あまりが臨洮の西南の望曲谷（ぼうきょくこく）に駐屯していました。同年12月、羌は漢の耿恭の司馬と隴西長史を和羅谷（わらこく）で撃破し、漢軍は死者数百人を出しました。

建初3年（78年）春、馬防は司馬の夏駿（かしゅん）に5000人を率いさせて大きな道から羌の正面に進出させ、ひそかに司馬の馬彭（ばほう）に5000人を率いさせて間道から羌の側面を突かせました。さらに長史の李調（りちょう）らに4000人を率いさせて羌の西側を囲ませました。三道並進して、再び羌を破り、1000人あまりを斬りあるいは捕らえました。羌の残兵が敗走したので、夏駿が追撃しましたが、かえって敗退しました。馬防は兵を率いて索西（さくせい）で戦い、またこれを破りました。羌の布橋は1万人あまりを率いて降伏しました。馬防は章帝の命により洛陽（らくよう）に召還され、城門校尉のまま正式に車騎将軍に任じられました。

建初4年（79年）、潁陽侯（えいようこう）に封じられました。たびたび車騎将軍の位を譲りたいと願い出て、特進（とくしん）として私邸に下がりました。この年、明徳皇太后（めいとくこうたいごう）が死去しました。建初5年（80年）、光禄勲（こうろくくん）に任じられました。馬防は政事についてたびたび言上し、多くは採用されました。この冬に始めて十二月迎気楽（じゅうにがつげいきがく）がとりおこなわれたのは、馬防の上書によるものです。建初6年（81年）1月、子の馬鉅（ばきょ）が加冠することとなり、特例として黄門侍郎に任じられました。建初7年（82年）、馬防は病のため引退を願い出て、中山王劉焉（ちゅうざんおうりゅうえん）のかつての田廬（でんろ）を賜って、特進として私邸に下がりました。

馬防の兄弟の権勢は盛んで、その所有する奴婢（ぬひ）はおのおの1000人を超えました。その資産は巨万を数え、みな洛陽に肥沃な美田を購入していました。広壮な邸を建て、多くの音楽家を集めてにぎやかしました。賓客（ひんかく）が各地から集まり、杜篤（ととく）らの仲間数百人を食客（しょっかく）として、門下に置いていました。刺史（しし）や太守（たいしゅ）や県令（けんれい）の多くを馬家から輩出し、歳時にあたっては故郷に振る舞うことを忘れなかった。馬防は羌から収奪した馬を多く飼っていました。章帝はこのことを喜ばず、たびたび譴責（けんせき）を加えて禁止させました。このため馬氏の権勢はやや衰え、賓客も減少しました。建初8年（83年）、兄の馬廖（ばりょう）の子の馬豫（ばよ）が政治を批判したことから、馬防と馬光の兄弟は御史（ぎょし）の弾劾（だんがい）を受けて免官され、封国へ下向することになりました。

永元6年（94年）、弟の馬光が誣告（ぶこく）を受けて自殺すると、馬防は兄の馬廖の子の馬遵（ばじゅん）らとともに連座（れんざ）して丹陽（たんよう）に移されました。馬防は翟郷侯（たくきょうこう）となりましたが、歳入は300万に限られ、侯国の官吏や民衆を臣下とすることも許されませんでした。後に馬防は江南（こうなん）の暑湿（しょしつ）を嫌って、上書して故郷の右扶風に帰りたいと願い出ると、和帝（わてい）はこれを許可しました。永元13年（101年）、馬防は死去しました。

子の馬鉅が後を嗣ぎ、後に長水校尉となりました。

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