駒井町

駒井町（こまいまち）

駒井町は、東京都狛江市の南東端に位置する町名です。多摩川の北岸に広がり、豊かな自然と歴史を持つ地域として知られています。

地理

駒井町は、多摩川沿いのほぼ平坦な地形が特徴です。地盤は関東ローム層に覆われ比較的安定していますが、多摩川沿いの低地では軟弱な地盤も見られます。自然が豊かで、特に畑が多く残る地域であり、狛江市の都市設計計画では「農の拠点」と位置づけられています。緑被率が高く、町全体で25%を超え、特に二丁目・三丁目では30%を超えています。

位置と変遷

駒井町は、かつて駒井村として成立し、狛江村発足後は狛江村駒井となりました。1912年の多摩川の氾濫による流域変更で、飛地となっていた宿河原の一部が編入され、現在の形にほぼなりました。1982年11月1日に住居表示が実施され、駒井町一丁目から三丁目となりました。現在では、岩戸南、世田谷区喜多見、猪方、多摩川を隔てて川崎市多摩区宿河原と接しています。

地価

2022年の地価公示によると、駒井町一丁目の住宅地の公示地価は251,000円/m²です。

災害

駒井町は多摩川に近いため、過去に何度も水害に見舞われています。昭和期に堤防が建設されましたが、台風などにより決壊したこともありました。近年では、令和元年東日本台風で内水氾濫が発生し、浸水被害や交通機関の麻痺が発生しました。

歴史

地名の由来

駒井という地名は、狛江郷の語源になったとされています。「こまい」と「こまえ」が似ているため、区別するために「駒井町」という町名が用いられました。

中世

中世の史料『小田原北条分限帳』には、駒井本郷、駒井登戸、駒井宿河原などの地名が見られ、駒井が多摩川北岸の広い地域を指す地名であったことがわかります。多摩川は過去に何度も氾濫し流域を変えており、1596年の大洪水によって流れが変わり、地名が分断されたと考えられています。

近世

江戸時代には、喜多見氏が駒井村を治めていましたが、後に幕府領となり、伊奈半左衛門と小野田三郎右衛門によって支配されました。当時の村高は28石余でしたが、1833年までに77石余に増加しました。当時の駒井村は戸数30で、畑作が盛んでした。

明治時代

幕府領であった駒井村は、1869年に品川県の管轄地となり、その後東京府、神奈川県と管轄が変わりました。1872年には、周辺の村々と7か村組合を設立し、公立の学校を設立しました。1889年、市制及び町村制の施行により、周辺の村と合併し狛江村となりました。1912年には、多摩川の流路変更により、宿河原の一部が狛江村に編入されました。

昭和時代

1952年、狛江村の町制施行により狛江町駒井となり、1970年の市制施行により狛江市駒井となりました。1982年には住居表示が実施され、駒井町一丁目・二丁目・三丁目が設置されました。

現代

1997年には、町会の会則が改正され、簡易保険の団体払い込み制度の受け皿としての役割を担うことになりました。

2023年には、駒井町で強盗殺人事件が発生しました。

産業

現代の産業

かつては米麦や梨、桃などの生産が盛んでしたが、現在ではネギや枝豆の生産が少量あるのみとなっています。宅地化が進行し、農業中心の社会から変化しています。

歴史的な産業

明治前期には、米、小麦、桑、繭などが主要な生産物でした。また、傘や下駄などの手工業による製品も生産されていました。駒井地区では、岩戸川の水を利用して農地を潤していましたが、昭和時代後期までに二毛作による農業は廃れました。かつては農繁期託児所が設置され、戦後には4Hクラブが組織され、シイタケ栽培などが行われていました。

稲作

用水堀が整備されると、駒井でも稲作が盛んに行われるようになりました。水田は冬季には陸田として利用され、麦や野菜などが栽培されました。しかし、1970年代にカドミウムが検出されたことや、住宅地への転用が進んだことなどから、米の栽培は減少し、1984年に狛江市での稲作は行われなくなりました。

養蚕業

明治期から副業として養蚕が盛んに行われましたが、大正期になると衰退し、桑畑は果樹園に転換されました。

多摩川梨

養蚕業の衰退後、梨や桃の栽培が盛んになりました。多摩川流域で栽培された梨は「多摩川梨」と呼ばれ、駒井地区でも砂質土壌が果樹栽培に適していたため、梨山と呼ばれる地域で栽培が行われました。しかし、水不足や住宅増加、農薬使用の制限などにより衰退し、平成までに梨農家は消滅しました。

砂利採掘

昭和時代後半までは多摩川周辺で砂利採掘も盛んに行われましたが、堤防への影響などから禁止されました。

漁業

多摩川では、アユやヤマメ、マルタ、ハヤなどの魚が獲れ、自宅で食したり、市場に出荷したりしていました。

人口

2023年1月1日現在の人口は、2,102世帯4,523人です。

交通

駒井町内には鉄道駅はありませんが、小田急線の和泉多摩川駅が最寄り駅です。路線バスで狛江駅、和泉多摩川駅、喜多見駅へアクセスできます。

施設

教育施設

狛江市立狛江第六小学校
狛江市立駒井保育園

公園

供養塚児童公園
駒井・上村中ひだまり公園
駒井公園
狛江水辺の楽校

神社仏閣

日枝神社
圓住院
宿河原稲荷
秋元稲荷
駒井の北向き地蔵

その他

猪方排水樋管
* 狛江市消防団第八分団器具置場

駒井町は、豊かな自然と歴史、そして人々の生活が息づく魅力的な地域です。

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