高千穂鉄道

高千穂鉄道株式会社

高千穂鉄道は、かつて宮崎県北部を走っていた鉄道会社です。旧国鉄高千穂線の運営を引き継ぎ、地域住民の足として、また観光路線として活躍しました。

設立と運営

1988年、高千穂線を引き継ぐ形で第三セクターとして設立されました。沿線には、東洋一の高さを誇る高千穂鉄橋や、「神話の里」として知られる高千穂町があり、風光明媚な五ヶ瀬川の渓谷沿いを走る路線は、観光資源としても大きな魅力を持っていました。

高千穂鉄道は、展望型気動車やトロッコ車両の導入、駅舎内に温泉施設を設けるなど、積極的な観光振興策を展開しました。特に2003年に導入された「トロッコ神楽号」は、観光客を大幅に増加させ、利用客全体の増加にも貢献しました。団体ツアー客も多く、高千穂峡などの観光名所と組み合わせた片道乗車プランは人気を博し、高千穂の新たな観光の目玉となりました。

廃線へ

2005年、台風14号による暴風雨で鉄道設備が甚大な被害を受け、全線運転休止となりました。復旧には多額の費用がかかるため、県や沿線自治体は復旧費用の負担に難色を示し、全線での運転再開を断念せざるを得ませんでした。一部区間での運転再開も検討されましたが、採算性の問題から断念され、2006年12月に全線廃止が決定しました。

高千穂鉄道の社員は解雇され、会社は清算手続きに入りました。その後、高千穂鉄道の資産は、地元関係者が設立した神話高千穂トロッコ鉄道（現・高千穂あまてらす鉄道）へ譲渡されることになりましたが、課税問題などにより、譲渡手続きは難航しました。2007年には、宮崎県知事が運行再開への意欲を示しましたが、実現には至らず、2008年に全線が廃止されました。これにより、宮崎県からJR以外の鉄道事業者は姿を消すことになりました。高千穂鉄道は、2009年に清算結了し、法人格が消滅しました。

路線と車両

路線

高千穂線：延岡 - 高千穂 50.0km

車両

TR-100形・TR-200形：1989年の開業時に導入された気動車。TR-100形は一般用、TR-200形は観光用として使用されました。全車、新潟鐵工所製のレールバス型気動車で、両運転台でトイレはなし。TR-100形はセミクロスシート、TR-200形はボックスシートです。

TR-300形：1991年導入の観光用車両。秋田内陸縦貫鉄道の車両をベースとしており、サロンコーナーや転換クロスシートを備えていました。2003年に廃車されました。

TR-400形：2003年導入のトロッコ型気動車。松浦鉄道などのレトロ調気動車をベースにしており、着脱式の窓とテーブル付きのボックスシートを備えています。2両導入され、それぞれ「手力男（たぢからお）」と「天鈿女（あまのうずめ）」の愛称がつけられました。廃線後、JR九州に売却され、特急「海幸山幸」として活躍しています。

歴史

1988年12月14日：高千穂鉄道株式会社設立。
1989年4月28日：JR九州高千穂線を転換し高千穂線開業。
2003年3月21日：トロッコ列車「トロッコ神楽号」営業運転開始。
2005年9月6日：台風14号により全線運転休止。
2005年12月20日：全線復旧を断念。
2006年9月5日：延岡駅 - 槇峰駅間の廃止届と槇峰駅 - 高千穂駅間の休止届を提出。
2007年9月6日：延岡駅 - 槇峰駅間廃止。
2008年12月28日：槇峰駅 - 高千穂駅間廃止（全線廃止）。
2009年1月6日：会社解散。
2009年3月末：清算結了。

高千穂鉄道のその後

高千穂鉄道の廃止後、延岡 - 高千穂間の公共交通は、宮崎交通を中心としたバス輸送で代替されています。また、高千穂鉄道の一部区間は、高千穂あまてらす鉄道により観光トロッコ列車として運行が再開されています。

高千穂鉄道は、その短い歴史の中で地域に愛され、観光振興に貢献しましたが、自然災害には勝てず、惜しまれつつその役割を終えました。

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