高堂隆

高堂隆（こうどう りゅう）

高堂隆（生没年不詳）は、後漢末期から三国時代の魏に仕えた官僚、政治家。字は升平。兗州泰山郡平陽県（現在の山東省新泰市一帯）の出身で、前漢時代の儒学者である高堂生を祖先にもつ。

生涯

若い頃から儒学を学び、泰山太守の薛悌（せつてい）に才能を認められ督郵（とくゆう）に任命された。213年、曹操（そうそう）に召し出され、その才能を高く評価される。曹操の子である曹徽（そうき）が歴城侯（れきじょうこう）に封じられると、その補佐役である相（しょう）として仕えた。曹操の死後、曹徽が喪に服すべき期間に狩猟に興じていた際、高堂隆はこれを厳しく諫めたという。

その後、平原王（へいげんおう）となった曹叡（そうえい）の傅役（ふえき、教育係）となり、曹叡が即位すると給事中（きゅうじちゅう）、博士（はかせ）、駙馬都尉（ふばとつい）といった官職を歴任した。さらに散騎常侍（さんきじょうじ）、侍中（じちゅう）、光禄勲（こうろくん）を歴任し、皇帝の側近として重用された。在任中、曹叡が宮殿の建設を盛んに行うことを度々諫めた。

没年は明らかではないが、『三国志』魏書高堂隆伝には、蔣済（しょうさい）が曹叡に封禅（ほうぜん）の儀式を行うよう進言した際、曹叡が高堂隆にその儀礼の作成を命じたものの、完成前に高堂隆が死去したため、曹叡が「天はわしの事業を成就させたくなかったのだろう」と嘆いたという記述がある。このことから、高堂隆は曹叡の在世中、すなわち239年以前に亡くなったと考えられる。

人物・逸話

高堂隆は、学識に優れ、正義感の強い人物であったと伝えられている。

都の督軍（とくぐん）が薛悌と論争した際、薛悌を呼び捨てにして怒鳴りつけたことがあった。これに対し、高堂隆は剣に手をかけ督軍を叱責し、「臣下を前にして主君を呼び捨てにするとは何事か！」と激しく非難した。督軍は恐れ入って謝罪し、薛悌は高堂隆の行動に感謝したという。
魏の尚書省（しょうしょしょう）から「物故（ぶっこ）」の意味について質問があった際、高堂隆は「物とは無の意であり、故とは事の意である。つまり、二度と何事もすることができないという意味である」と答えた。
『魏書』方技伝に引用される馬鈞（ばきん）の記事によれば、馬鈞が指南車（しなんしゃ）を完成させる前に、高堂隆は秦朗（しんろう）と共に「指南車などは昔の記録を適当に書いただけだ」と主張し、馬鈞を嘲笑したという。

評価

高堂隆は、その諫言によって曹叡の浪費を抑制し、国政に貢献したとされる。しかし、指南車を嘲笑した逸話などから、必ずしも先見の明があったとは言えない側面も指摘されている。また、儒学に偏重するあまり、実用的な技術を軽視する傾向があったとも考えられる。

参考文献

『三国志』魏書25 高堂隆伝

もう一度検索