高木正年

高木正年：日本初の盲人代議士、その生涯と功績

高木正年（たかぎ まさとし / せいねん、1857年1月4日 - 1934年12月31日）は、日本の政治家であり、日本で初めて視覚障害を持ちながら衆議院議員を務めた人物です。激動の時代の中、困難を乗り越え政治家として活躍したその生涯は、多くの人々に勇気を与えました。

生い立ちと初期の活躍

高木正年は、安政3年（1857年）に武蔵国荏原郡南品川（現在の東京都品川区）で、質屋を営む細井家の三男として生まれました。幼い頃からその才能を発揮し、親戚である高木家の養子となります。養父は幕臣であり、本草学者でもあった高木一兵衛以考でした。12歳から16歳にかけては、隣家に隠棲していた木村芥舟に学び、その後も猿渡容盛、井上頼圀、江木高遠といった学者に師事し、学問を深めました。

明治16年（1883年）には東京府会議員に当選し、政治家としての第一歩を踏み出します。そして、明治23年（1890年）の第1回衆議院議員総選挙に立候補し、見事当選。34歳にして衆議院議員となりました。

試練と再起

しかし、順風満帆とはいきませんでした。明治25年（1892年）の第3回総選挙では、第1次松方内閣による選挙干渉を受け、惜しくも落選。これは、高木正が生涯で唯一経験した、失明前の落選でした。

明治30年（1897年）、40歳の時に緑内障を発症し、視力を失います。絶望の淵に立たされた高木を支えたのは、同僚議員であった柴四朗の励ましでした。その支援もあり、高木は失明からのリハビリに励み、驚くべき速さで政治活動に復帰します。広い選挙区（荏原郡・豊多摩・伊豆七島）を、不自由な体で精力的にまわり、有権者に訴えかけました。

明治36年（1903年）には、第1回全国盲人大会に出席。自らの経験を語り、視覚障害者の地位向上に尽力しました。その後も、衆議院議員として活躍し、当選回数は合計13回、議員生活は39年にも及びました。

普通選挙と晩年

大正時代に入り、普通選挙運動が高まる中、高木正年は、その実現に尽力しました。昭和3年（1928年）の第1回普通選挙（第16回総選挙）では、4万7278票を獲得し、見事トップ当選を果たします。続く第2回、第3回普通選挙でも当選し、国民からの信頼の厚さを示しました。

昭和9年（1934年）12月、高木正年は78歳でその生涯を閉じました。墓所は東京都品川区南品川の妙蓮寺にあります。

没後の評価と影響

高木正年の死後、日本で視覚障害を持つ国会議員が誕生したのは、半世紀以上後のことでした。昭和64年（1989年）の参議院議員通常選挙で堀利和が当選し、2人目の盲人国会議員となりました。

高木正年は、その生涯を通じて、障害を持つ人々の社会参加を訴え続けました。その功績は、『道ひとすじ―昭和を生きた盲人たち―』の中でも紹介され、昭和時代に活躍した著名な盲人の一人として、その名が刻まれています。

まとめ

高木正年は、日本初の盲人代議士として、困難を乗り越え、政治家として国民のために尽力しました。その不屈の精神と行動力は、現代においても多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

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