高校野球審判員

高校野球の公式戦で、ルールに基づき試合の進行を管理し、公平な判定を下す役割を担うのが高校野球審判員です。一般的には「高校野球審判委員」とも呼ばれます。

審判員になるための道

高校野球の審判員として活動するためには、まず各都道府県高等学校野球連盟に登録する必要があります。登録方法は都道府県連盟によって異なり、出身校の野球部部長の推薦や連盟からの引き抜きなどが挙げられます。登録に際しては、年齢制限が設けられたり、担当する地区が指定されたりする場合もあります。

登録後は、都道府県高野連が主催する講習会を受講することが義務付けられています。こうした研修を通じて、審判に必要な知識や技術を習得します。

活動の初期段階では、主に練習試合の塁審や球審を担当します。その後、試合経験を積み重ね、技量を認められることで、地区大会の公式戦、さらには球審を務める機会へとステップアップしていきます。

活動の実態と課題

高校野球の審判員は、プロ野球審判員とは異なり、基本的にボランティアとして活動しています。現職の警察官、医師、教職員、救命救急士など、様々な職業を持つ人々が、仕事の傍ら審判を務めています。日頃から地区の学校の動向や有望選手の進路といった情報に通じている一方で、試合は平日に行われることも多く、活動には大きな時間的拘束が伴います。特に、春夏の甲子園大会では、最低でも10日以上の長期休暇が必要となるため、勤務先や家族の深い理解と協力が不可欠です。

近年、若い世代の審判員が不足しており、将来を担う後継者の確保は重要な課題として認識されています。

審判服の変遷

高校野球の審判服は時代とともに変化してきました。現在の服装は、国際野球連盟標準仕様やボーイズリーグ規定に準じたデザインが採用されています。かつて夏の甲子園では白の長袖シャツに紺のスラックスが一般的でしたが、地方大会では白や水色の半袖シャツも使用されていました。春の選抜大会では、紺色のブレザーに紺のスラックス、そして1981年までは蝶ネクタイ、以降は通常の紺色ネクタイを着用していました。第87回選抜大会からは、スラックスの色がチャコールグレーに変更されています。

全国大会における役割

阪神甲子園球場で行われる全国大会では、全国大会審判委員と、各都道府県から派遣される審判委員によって運営されます。1試合あたりの審判員は7名体制で、グラウンド上で判定を行う4名（球審1名、塁審3名）、緊急時に備える予備審判員2名、そして報道対応や他の審判員からの質問に応じる控え審判員1名で構成されます。ナイターの場合、予備審判員2名は外野の審判（外審）としてグラウンドに立ちます。

全国大会独自の取り決めとして、公正さを保つため、審判員は自身の所属する都道府県代表チームの試合を担当することができません。この規定は大会の初戦から決勝戦まで一貫して適用されます。

都道府県からの派遣審判員は、およそ6年に一度の割り当てで甲子園での審判を務める機会を得ます。彼らは主に球審以外のポジションを担当します。一方、全国大会審判委員は球審を含む全てのポジションを担当します。

決勝戦の球審

甲子園大会の決勝戦で球審という大役を務める審判員は、全国大会審判委員の中から選ばれます。選考基準としては、卓越した人間性、正確な球審能力、そして甲子園球場での経験が重視されます。長年にわたり準々決勝や準決勝といった重要な試合で球審を務めてきたベテランが、次期決勝戦の球審候補となるのが通例です。地方大会の決勝戦でも、同様の基準で球審が決められることが多いとされます。2000年代以降、甲子園大会の決勝球審は概ね45歳以上の中堅からベテラン審判員が務めることが慣例となっています。

以下に、1958年以降の春夏甲子園大会決勝戦の球審を務めた審判員を挙げます。

- [1958年]] - 第30回春：山本英一郎、第40回夏：大槻
- 1959年 - 第31回春：大槻、第41回夏：相田暢一
- 1960年 - 第32回春：山本英一郎、第42回夏：山本英一郎
- 1961年 - 第33回春：山本英一郎、第43回夏：山本英一郎
- 1962年 - 第34回春：山本英一郎、第44回夏：山本英一郎
- 1963年 - 第35回春：山本英一郎、第45回夏：米谷道雄
- 1964年 - 第36回春：山本英一郎、第46回夏：山本英一郎
- 1965年 - 第37回春：米谷道雄、第47回夏：米谷道雄
- 1966年 - 第38回春：郷司裕、第48回夏：郷司裕
- 1967年 - 第39回春：郷司裕、第49回夏：郷司裕
- 1968年 - 第40回春：郷司裕、第50回夏：郷司裕
- 1969年 - 第41回春：郷司裕、第51回夏：郷司裕]
- [[1970年 - 第42回春：郷司裕、第52回夏：郷司裕
- 1971年 - 第43回春：永野元玄、第53回夏：郷司裕
- 1972年 - 第44回春：郷司裕、第54回夏：郷司裕
- 1973年 - 第45回春：郷司裕、第55回夏：郷司裕
- 1974年 - 第46回春：永野元玄、第56回夏：郷司裕
- 1975年 - 第47回春：郷司裕、第57回夏：郷司裕
- 1976年 - 第48回春：郷司裕、第58回夏：永野元玄
- 1977年 - 第49回春：郷司裕、第59回夏：郷司裕
- 1978年 - 第50回春：永野元玄、第60回夏：山川修司
- 1979年 - 第51回春：郷司裕、第61回夏：郷司裕
- 1980年 - 第52回春：元橋一登、第62回夏：永野元玄
- 1981年 - 第53回春：郷司裕、第63回夏：元橋一登
- 1982年 - 第54回春：永野元玄、第64回夏：永野元玄
- 1983年 - 第55回春：西大立目永、第65回夏：郷司裕
- 1984年 - 第56回春：永野元玄、第66回夏：布施勝久
- 1985年 - 第57回春：中西明、第67回夏：西大立目永
- 1986年 - 第58回春：布施勝久、第68回夏：中西明
- 1987年 - 第59回春：田中美一、第69回夏：布施勝久
- 1988年 - 第60回春：永野元玄、第70回夏：布施勝久
- 1989年 - 第61回春：布施勝久、第71回夏：本郷良直
- 1990年 - 第62回春：布施勝久、第72回夏：三宅享次
- 1991年 - 第63回春：永野元玄、第73回夏：永野元玄
- 1992年 - 第64回春：永野元玄、第74回夏：布施勝久
- 1993年 - 第65回春：永野元玄、第75回夏：永野元玄
- 1994年 - 第66回春：田中美一、第76回夏：木嶋一黄
- 1995年 - 第67回春：清水幹裕、第77回夏：田中美一
- 1996年 - 第68回春：木嶋一黄、第78回夏：田中美一
- 1997年 - 第69回春：清水幹裕、第79回夏：木嶋一黄
- 1998年 - 第70回春：岡本良一、第80回夏：岡本良一
- 1999年 - 第71回春：桂等、第81回夏：木嶋一黄
- 2000年 - 第72回春：岡本良一、第82回夏：木嶋一黄
- 2001年 - 第73回春：中本尚、第83回夏：桂等
- 2002年 - 第74回春：杉中豊、第84回夏：岡本良一
- 2003年 - 第75回春：桂等、第85回夏：桂等
- 2004年 - 第76回春：赤井淳二、第86回夏：岡本良一
- 2005年 - 第77回春：桂等、第87回夏：赤井淳二
- 2006年 - 第78回春：赤井淳二、第88回夏：赤井淳二(再試合も同様)
- 2007年 - 第79回春：桂等、第89回夏：桂等
- 2008年 - 第80回春：赤井淳二、第90回夏：赤井淳二
- 2009年 - 第81回春：長谷川次郎、第91回夏：日野高
- 2010年 - 第82回春：若林浩、第92回夏：古川泰史
- 2011年 - 第83回春：日野高、第93回夏：長谷川次郎
- 2012年 - 第84回春：橘公政、第94回夏：若林浩
- 2013年 - 第85回春：窪田哲之、第95回夏：窪田哲之
- 2014年 - 第86回春：橘公政、第96回夏：古川泰史
- 2015年 - 第87回春：若林浩、第97回夏：古川泰史
- 2016年 - 第88回春：田中豊久、第98回夏：古川泰史
- 2017年 - 第89回春：戸塚俊美、第99回夏：野口敏行
- 2018年 - 第90回春：宅間寛、第100回夏：堅田外司昭
- 2019年 - 第91回春：田中豊久、第101回夏：宅間寛
- 2020年 - 交流試合：永井秀亮
- 2021年 - 第93回春：田中豊久、第103回夏：田中豊久
- 2022年 - 第94回春：美野正則、第104回夏：尾崎泰輔
- 2023年 - 第95回春：大槻康彦、第105回夏：山口智久
- 2024年 - 第96回春：西貝雅裕、第106回夏：永井秀亮
- 2025年 - 第97回春：大槻康彦

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