高橋伸夫 (地理学者)

高橋伸夫（たかはし のぶお）

高橋伸夫は、1939年9月29日に東京都台東区で生まれ、2013年7月14日に73歳で逝去した日本の地理学者です。筑波大学の名誉教授であり、人文[[地理学]]、特に都市地理学の分野で数多くの研究業績を残しました。

学歴と職歴

高橋は、東京教育大学附属小学校、中学校、高等学校（現在の筑波大学附属各学校）を卒業後、1960年に東京教育大学理学部に入学しました。青野壽郎教授の指導を受け、1964年に地理学専攻を卒業。その後、母校の附属高校の教諭を1年務めた後、1965年に東京教育大学大学院理学研究科地理学専攻に進学しました。修士課程修了後、博士課程に進みましたが、1969年に退学。翌年には同大学理学部の助手として教鞭を執りました。

1970年、フランス政府給費留学生としてパリ第1大学地理学研究所博士課程に留学。「日本における工業化に伴う都市化の進展」をテーマに研究に取り組み、1972年に地理学博士号を取得しました。留学中には、フランス地理学を代表する学者であるフィリップ・パンシュメル、ポール・クラヴァル、ジャン＝ロベール・ピットらと交流を深めました。

帰国後の1974年には、「清水市域における都市化の展開」の研究で東京教育大学からも理学博士号を授与されました。同年から筑波大学に助手として着任し、地球科学系長などを歴任、2003年に名誉教授となりました。筑波大学に所属する傍ら、東北大学、秋田大学、茨城大学、つくば国際大学、埼玉大学、千葉大学、お茶の水女子大学、東京都立大学、東京都立教育研究所、日本大学、法政大学、広島大学、岡山大学、パリ第7大学など多くの大学で非常勤講師を務めました。

研究活動と教育への貢献

高橋の研究領域は幅広く、都市地理学、金融の地理学、フランスや南アメリカの地誌学的研究など多岐に渡りました。特に、都市の構造や変化、経済活動の地域的な分布に関する研究で知られています。また、地理教育にも熱心に取り組み、教科書や参考書を多数執筆・編集し、「教科書の高橋」と呼ばれるほどでした。

学会活動においては、日仏地理学会会長などを歴任し、国際的な地理学研究の発展にも貢献しました。2003年に退官した後も研究活動を続け、生涯に約40冊もの著書を発表しました。その著作は、専門家だけでなく一般の読者にも地理学の面白さを伝えるものとして高く評価されています。

主な著書

高橋は、生涯で多数の著書を発表しました。以下はその一部です。

単著
『フランスの都市』（二宮書店、1981年）
『金融の地域構造』（大明堂、1983年）
編著
『この一冊で世界の地理がわかる！』（三笠書房、1998年）
『面白いほど世界がわかる「地理」の本』（三笠書房、2012年）（井田仁康との共編）
共編著
『都市地理学入門』（原書房、1984年）（菅野峰明、永野征男との共編）
『地理学への招待』（古今書院、1988年）（中村和郎との共編）
『世界地図を読む―図説 世界地理』（大明堂、1993年）（菅野峰明、山下清海、山下脩二、手塚章との共編）
『日本の三大都市圏 : その変容と将来像』（古今書院、1994年）（谷内達との共著）
『文化地理学入門』（東洋書林、1995年）（小野寺淳、田林明、中川正との共著）
『ジオグラフィー入門―地理学でみる日本と世界』（古今書院、1996年）（阿部和俊、谷内達、佐藤哲夫との共著）
『パリ大都市圏 : その構造変容』（東洋書林、1998年）（手塚章、ジャン＝ロベール・ピットとの共編著）
『ジオグラフィー入門―考える力を養う地理学は面白い』（古今書院、2008年）（谷内達、阿部和俊、佐藤哲夫、杉谷隆との共著）
『新しい都市地理学』（東洋書林、1997年）（村山祐司、菅野峰明、伊藤悟との共著）
『EU統合下におけるフランスの地方中心都市』（古今書院、2003年）（村山祐司、手塚章、ジャン＝ロベール・ピットとの共編著）
『現代地理学入門 : 身近な地域から世界まで』（古今書院、2005年）（内田和子、岡本耕平、佐藤哲夫との共編著）
『都市空間の見方・考え方』（古今書院、2013年）（菊地俊夫、根田克彦、山下宗利との共編著）
訳書
『地理空間』（白水社、1975年）（オリヴィエ・ドルフュス著、山本正三との共訳）
『フランス : その国土と人々』（帝国書院、1977年）

晩年と遺志

高橋伸夫は、2013年7月14日に73歳で亡くなりました。その遺志により、しばらくの間、逝去の事実は地理学関係者以外には公表されませんでした。高橋の死は、地理学界にとって大きな損失であり、その研究業績と教育への貢献は、今後も長く語り継がれることでしょう。

もう一度検索