高橋均 (音楽評論家)

高橋均（たかはし ひとし）

高橋均は、1900年10月20日に愛媛県で生まれ、1978年2月10日に没した音楽評論家、雑誌編集者です。筆名として古久文治、K・T生を使用していました。父はプロテスタントの牧師である高橋鷹藏です。

生涯

16歳頃から信時潔に師事し、音楽の道を歩み始めました。東京音楽学校ではヴァイオリンを専攻しましたが、2年で中退。在学中に乙骨三郎の知遇を得ました。また、日本プロレタリア音楽家同盟に所属し、1922年の日本共産党結党式では、革命歌インターナショナルの演奏と歌唱指導を行いました。1923年には信時の斡旋で雑誌『音樂研究』を編集し、音楽研究社から5冊を発行しました。この頃、大山郁夫の書生も務めています。

『音樂研究』廃刊後、小笠原の父島で漁師を経験。その後、日本労農党の長谷川如是閑が主宰する雑誌『我等』に参加しました。1927年から1928年頃には、プロレタリア前衛芸術家同盟の初代音楽部長を務め、雑誌『前衛』にも参加しました。1935年からは季刊誌『音樂研究』を再び編集し、共益商社書店から発行しました。1937年にはピアニストの蔭山英子と結婚し、子に音楽家の高橋悠治、高橋アキがいます。1938年に季刊誌『音樂研究』は廃刊となりました。

戦後は憲法普及会に属して事務局長を務め、芦田均とも親交がありました。また、信時潔門下の長谷川良夫とも交流がありました。その後、三菱化成黒崎工場に就職し、香港独立運動を経て、河出書房再建計画を立案しました。

雑誌『音樂研究』

高橋均が編集に携わった『音樂研究』は、2度にわたり刊行されました。1923年に音樂研究社から創刊された第1期は、同年中に5冊が刊行されました。第2期は1935年に共益商社書店から季刊誌として復刊し、1938年までの3年間で全12冊が刊行されました。

この雑誌は、毎号130ページから140ページという厚さを持ち、特集を組んで徹底的な研究を行うという内容でした。邦楽研究、国語と音楽、機械と音楽など、幅広いテーマを取り扱いました。「日本音楽の現状と批判」特集では、長谷川良夫の「現代流行歌論」や守田正義の日本の作曲界批判を掲載しました。また、「シェーンベルク特集」や「バルトーク特集」など、当時としては非常に先進的な内容も扱っており、特に「バルトーク特集」では、バルトーク本人と文通を行い、資料提供を受け、彼の民謡研究論文を翻訳紹介しました。この雑誌は、「当時としては最先端のアクティヴな雑誌」として、新ウィーン楽派やバルトークをリアルタイムで紹介する役割を担いました。ブゾーニの『音楽美学』も掲載され、後に高橋悠治が読むことになりました。

作詞・著書・翻訳

高橋均は、作詞家としても活動しており、女声三部合唱「初菫」の作詞を手がけました。また、著書として『ピアニストは無用か 兼常博士の迷論』（1935年）を執筆しました。この著書では、音響学者の兼常清佐が提唱した「ピアニスト無用論」に対して、議論の根幹である「タッチ」の問題を詳細に論じ、その問題点を指摘しています。

翻訳家としては、ルイ・ラロワの『音楽の将来』を『音樂研究』に掲載し、デヴィド・スイ・テーラーの『唱歌法の原理』を澤崎定之と共訳、マクファースンの『器樂鑑賞の基礎』を翻訳しました。

高橋均は、音楽評論、雑誌編集、社会運動、執筆活動など、多岐にわたる分野で才能を発揮した人物です。その功績は、日本の音楽文化の発展に大きく貢献しました。

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