澤崎定之

澤崎定之（さわざき さだゆき、1889年5月17日 - 1949年4月15日）は、日本の洋楽界の発展に大きく貢献した声楽家、音楽教育者、合唱指揮者、そして作曲家です。和歌山県有田市に生まれ、東京音楽学校（現・東京藝術大学音楽学部）で声楽を学びました。アウグスト・ユンケル、ハンカ・ペツォルトに師事し、テノール歌手としての基礎を築きました。

東京音楽学校卒業後、澤崎はテノール歌手として活動を始め、日本初の四重唱団「澤崎クヮルテット」を結成しました。このクヮルテットでは、ソプラノに武岡鶴代、アルトに柳兼子、バスに矢田部勁吉というメンバー構成で、数々の演奏記録を残しました。また、1924年には、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」の日本人初演でテノールソリストを務め、その功績は高く評価されました。

1929年、澤崎は東京音楽学校の教授に就任し、後進の指導に尽力しました。声楽科主任教授として、テノールの演奏活動を続けながら、木下保、畑中良輔、徳山璉、小山祐士、鈴木鎮一など、多くの才能ある音楽家を育成しました。また、小学校唱歌教育研究会児童唱歌コンクールの審査員を務めるなど、日本の音楽教育の発展にも貢献しました。

1935年、澤崎は欧米に2年間の視察旅行を行い、帰国後は合唱指導に専念しました。昭和合唱研究会、東京放送合唱団などを創設し、合唱音楽の普及に尽力しました。また、作曲家としても活動し、数多くの作品を残しています。代表作には、「犬と猫」「角力」「お手玉」などがあります。特に「お手玉」は文部省唱歌として広く親しまれました。

澤崎は1949年4月15日に59歳で亡くなりましたが、その音楽に対する情熱と教育への貢献は、今日でも高く評価されています。彼の残した業績は、日本の洋楽史において、重要な位置を占めています。

主な作曲作品

犬と猫（吉丸一昌作詩、1913年）
角力（吉丸一昌作詩、1913年）
お手玉（文部省唱歌、1933年）
単音唱歌 菊（青木歌子作詩、1933年）
旧 和歌山市歌（田辺善一作詞、1940年）
埼玉県立越ヶ谷高等学校校歌（高野辰之作詞、1935年）
岩手県一戸町立鳥海中学校校歌（東山重雄作詞）
和歌山県海南市立黒江小学校校歌（岩橋貞吉作詞、1923年頃）

著書・訳書

『唱歌法の原理 : 古代及近代各派の科学的分析に基づく聲音教養の合理的方法』（デヴィド・スイ・テーラー著、高橋均共訳、1929年）
『基礎唱歌法』（1935年）
『唱歌法 : 正しく美しい唱歌の基礎』（1949年）

楽譜

『お手玉』（文部省唱歌、1933年）
『単音唱歌 菊』（1933年）
『Marchesi : l'art du chant : méthode pratique 30 vocalises op. 21, (complete) pour mezzo soprano マルケージ・澤崎作品二十一番 : 合本 澤崎定之譯』（1933年）

主なディスコグラフィー

信時潔作品集成（2008年度文化庁芸術祭大賞受賞） - 澤﨑定之（指揮・独唱）ほか
ロームミュージックファンデーション SPレコード復刻CD集 - 澤﨑定之（指揮・独唱）ほか
* 西條八十全集/生誕100年 CD（1992年） - 澤崎定之指揮ほか

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