高瀬山遺跡

高瀬山遺跡（山形県寒河江市）

高瀬山遺跡は、山形県寒河江市の高瀬山一帯に広がる複合遺跡です。旧石器時代から中世に至るまでの長い期間にわたる人々の活動の痕跡が確認されており、地域の歴史を深く理解するための重要な手がかりを提供しています。

地理的特徴

遺跡は、最上川が五百川峡谷から村山盆地へと流れ込む地点の段丘上に位置しています。具体的には、寒河江川の扇状地の南端にあたり、遺跡の東端に位置する高瀬山は、標高122メートルの断層地塁となっています。比高差は20～30メートルです。

歴史

遺跡からは、各時代の多様な遺構や遺物が見つかっています。

旧石器時代: 標高112メートルの段丘上位面から石刃石器群が出土しており、この地における人類の活動は旧石器時代にまで遡ることがわかります。
縄文時代: 環状集落が形成され、直径120メートルの範囲内から37棟の竪穴建物跡と12棟の大型建物跡が検出されています。晩期には水場遺構も確認されており、当時の人々の生活を知る上で貴重な情報源となっています。
古墳時代: 古墳時代終末期に築造された高瀬山古墳が所在する段丘縁辺からは、古墳時代前期～中期の方形周溝墓11基と円墳5基が検出されています。
奈良・平安時代: 竪穴建物跡（528棟）、井戸、掘立柱建物跡（245棟）群など、数多くの遺構が発見されており、この時代に大規模な集落が形成されていたことが伺えます。周辺の落衣長者屋敷遺跡や三条遺跡の建物を含めると、2.3キロメートルの範囲に途切れることなく集落が続いていたと考えられています。
中世: 高瀬山頂上付近からは4基の経塚が発掘されており、中世における信仰の様子を垣間見ることができます。

発掘調査の歴史

高瀬山周辺では、明治時代から古墳や遺跡の存在が知られていましたが、その後の開墾により、ほとんどが失われてしまいました。しかし、1932年（昭和7年）にブドウ園の整備中に石槨から鉄製の直刀が出土したことをきっかけに発掘調査が行われ、高瀬山古墳が発見されました。この古墳は、1953年（昭和28年）に山形県指定史跡に指定されています。

1980年（昭和55年）には、高瀬山西側からの温泉湧出に伴う周辺開発計画が持ち上がり、遺跡の分布調査が実施されました。その結果、12地点で遺構・遺物の集中箇所が確認され、遺跡の重要性が再認識されることとなりました。

その後も、高瀬山J遺跡（1982年）、高瀬山B・K・L遺跡（1984年～1986年）、高瀬山K遺跡（1987年～1988年）などの発掘調査が行われ、多くの成果が得られています。

1989年（平成元年）には、東北横断自動車道酒田線（現山形自動車道）の建設が計画され、1989年～1992年（平成元年～4年）に分布調査が行われました。その結果、1.6キロメートルに渡って遺構や遺物が発見され、高瀬山遺跡の範囲が拡大されることとなりました。

周辺遺跡

高瀬山遺跡の半径5キロメートル圏内には、約40箇所の遺跡が分布しています。

金谷原遺跡: 旧石器時代の遺跡であり、出土した遺物から古代の石器製作場であったと推測されています。
三条遺跡: 縄文・弥生～中世の複合遺跡であり、再葬墓、土偶、稲作の痕跡、墨書土器などが発掘されています。
平野山遺跡: 縄文・奈良・平安時代の遺跡であり、落とし穴による狩猟の痕跡や多数の窯跡が発掘されています。
落衣長者屋敷遺跡: 縄文・奈良～中世の複合遺跡です。

これらの遺跡群は、高瀬山遺跡とともに、この地域の歴史と文化を豊かに物語っています。

参考文献

今, 正幸、大場, 正善、安部, 将平『高瀬山[遺跡]]（HO）3期発掘調査報告書』 200巻、山形県埋蔵文化財センター〈山形県埋蔵文化財センター調査報告書〉、2012年3月26日。doi:10.24484/sitereports.5630。 NCID BA82160760。([全国遺跡報告総覧-奈良文化財研究所)

関連項目

寒河江市
旧石器時代の遺跡一覧
縄文時代の遺跡一覧

外部リンク

全国遺跡報告総覧-奈良文化財研究所

もう一度検索