高等映画学院

フランスを代表する映画学校の歩み：高等映画学院（IDHEC）からFémisへ

フランス映画界に多大な貢献を果たした高等映画学院（Institut des hautes études cinématographiques, IDHEC）は、1943年、映画監督のマルセル・レルビエと作曲家のイヴ・ボードリエによってパリで設立されました。3年間の充実したカリキュラムで、演出、編集、撮影など映画制作に必要な多岐にわたる専門技術を学ぶ場として、フランス国内のみならず世界中から多くの才能ある学生を集めました。

IDHECは、その高い教育水準と、卒業生が世界的に活躍したことから、フランス映画界の揺るぎない礎となりました。イヴ・ボードリエ自身も1945年から1965年まで教鞭をとり、その教育理念は後進の育成に大きな影響を与えました。

輝かしい卒業生たち

IDHECは、数々の巨匠を輩出したことで知られています。その中には、ヌーベルバーグを代表するアラン・レネやクロード・ソーテ、そしてルイ・マル、パトリス・ルコントといった、フランス映画史に名を刻む巨匠たちの名前が並びます。さらに、国際的に高い評価を得ているアンジェイ・ズラウスキー、コスタ＝ガヴラス、ジャン＝ジャック・アノーといった監督も、IDHECで研鑽を積みました。

これらの監督たちが手がけた作品は、フランス映画のみならず世界中の映画史に大きな足跡を残し、その多くが今日でも高く評価されています。彼らの才能は、IDHECでの教育によって磨かれたと言えるでしょう。

また、IDHECの卒業生はフランスに限らず、世界各国で活躍しています。ブラジルのネルソン・ペレイラ・ドス・サントス、ギリシャのテオ・アンゲロプロス（ただし、放校処分となっています）、ドイツのフォルカー・シュレンドルフなど、国境を越えた活躍が目立ちます。日本からは高野悦子が卒業しており、国際色豊かな学校であったことが伺えます。

教育内容と教授陣

IDHECでは、実践的な教育に力を入れていました。単なる理論の学習だけでなく、実際に映画制作に関わることで、現場で求められるスキルを身につけることを重視していたと考えられます。

その教育を支えたのは、マルセル・レルビエ、アンドレ・テシネ、ジャン・ユスターシュといった、当時を代表する映画界の重鎮たちです。彼らの豊富な経験と知識は、学生たちにとって貴重な財産となったことでしょう。

Fémisへの改組とその後

1986年、IDHECはフランス国立映像音響芸術学院（Fémis）として再編されました。初代総長には、脚本家のジャン＝クロード・カリエールが就任し、新たな体制の下で映画教育は継続されました。その後、1998年にはENSMISに改称され、1999年にはパリ18区に移転。さらに2000年には現在の名称である「La Femis」へと改称され、現在もフランス映画界の中核を担う教育機関としてその役割を果たしています。

IDHECは、もはや存在しませんが、その伝統と精神は、Fémisに受け継がれ、これからも多くの才能ある映画人を輩出していくことでしょう。IDHECの卒業生たちが世界中に残した作品は、その輝かしい歴史を物語る、最高の遺産と言えるでしょう。

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