高速艇乙

高速艇乙（こうそくていおつ、略称：HB-O）

高速艇乙は、日本陸軍によって開発されたモーターボートで、特に上陸戦における陸上との通信や船舶間の連絡を目的として1930年に設計されました。この艇は、陸上戦における多様な支援の一環として開発され、主に上陸作戦の効率を高める役割を果たしました。

開発の背景

1920年代に入ると、日本陸軍は上陸戦に関連する戦術の研究を本格的に進めていました。それに伴い、大発動艇をはじめとする通常の上陸舟艇だけでなく、火力支援を行うための装甲艇なども開発されました。これらの舟艇は、より効果的に敵に対抗し、部隊の上陸を成功に導くために必要不可欠なものでした。高速艇乙は、その中でも特に通信の役割を担うために設計されたものです。

デザインと性能

高速艇乙は陸軍運輸部の設計により、1930年7月に完成しました。この艇は、以前に開発された高速艇甲とは異なり、用途が異なるため速度は控えめであり、約13ノットから16.5ノットの速力を持っています。これは西洋の同時代の艇に比べて控えめな性能ですが、当時の日本陸軍にとっては実用的な速度でした。

船体は、木材と鋼材のコンビネーションで構成され、一般的な排水型のデザインを持っています。搭載されるエンジンは、火災リスクの低いディーゼルエンジンが使用されており、100馬力から150馬力の出力に応じたモデルが存在していました。これにより、より安全で安定性の高い運用が可能でした。

さらに、最大で武装兵10人を乗せることができ、艇首には軽機関銃を装備し、屋根上には重機関銃を装備するオプションがあります。これにより、一定の防御力と攻撃力を兼ね備えた舟艇としての役割を果たしました。

生産と運用

高速艇乙は、相当数が建造され、1942年3月時点で44隻が既に配備済み、また44隻が建造中でした。しかし、太平洋戦争が進行する中で戦局が厳しくなると生産計画が見直され、1943年以降は生産が停止されました。実戦では、日中戦争から太平洋戦争にかけて様々な戦闘に参加しました。

特に注目すべき活動は、1937年11月の第二次上海事変における杭州湾上陸作戦です。この作戦では、大発動艇や装甲艇と共に10隻の高速艇乙が参加し、上陸部隊の支援を行いました。また、広東作戦や南方作戦、さらにソロモン諸島の戦いなどでも活躍しました。

しかし、同時期にアメリカ軍が使用していたPTボートと比較すると、速力や火力の面で劣位にあり、効果的に対抗するのは難しかったと言われています。

結論

高速艇乙は日本陸軍が上陸戦において通信と支援を行うために重要な役割を担った舟艇です。その性能は特定の戦術に特化したものであり、陸軍の戦術の変遷の中で、効率的にその役割を果たしました。この艇の開発は、日本陸軍の戦術的な進化を象徴する一例といえるでしょう。

もう一度検索