高麗史

『高麗史』について

『高麗史』は、高麗王朝の歴史を詳細に記載した紀伝体の官史です。高麗王朝は918年に始まり、1392年で終焉を迎えました。この歴史書は、李氏朝鮮時代の鄭麟趾らによって編纂され、1451年にその全貌が完成しました。編纂時には、高麗国王の実録やその他の公私文書が参考にされましたが、残念ながら大半は消失してしまいました。そのため、現在に残る主な史料は『高麗史』と、独立して編纂された春秋館の『高麗史節要』の2つとなっています。

高麗史の成立過程

1392年に李成桂が権力を握ると、鄭道伝の指導の下、1395年に編年体の『高麗国史』を編纂するプロジェクトが始まりました。ところが、高麗王朝では自国の王を「皇帝」と称していたため、周辺の明朝との関係に配慮し、改めて用語の見直しが必要とされました。李成桂が権力を簒奪する過程やその背景を記述することも問題となり、結果的に1398年に発生した第一次王子の乱により鄭道伝は失脚します。これを受け、1414年に太宗が改修を命じ、さらに世宗の代である1421年には卞季良と柳観らが再改修を行いました。

その後も改修が続き、1424年には柳観らが再度手を加えました。しかし、1443年には権踶や申槩らが改修を試みましたが、その出来は不十分とされ、正式には公開されることはありませんでした。最終的に金宗瑞や鄭麟趾らによって、編年体から紀伝体の形式に改められ、『高麗史』が完結しました。旧い編年体の原稿は、『高麗史節要』の編纂に活用されています。

日本における『高麗史』の受容

日本では江戸時代中期に『高麗史』の一部が輸入されましたが、前田綱紀と徳川光圀の競売によって加賀藩が手に入れたものの、その後はあまり活用されることはありませんでした。一方、日本における朝鮮半島の歴史や日朝関係の研究には、光圀が刊行した『東国通鑑』が使われることが多く、明治初期までその流れは続きました。1891年に山田安栄が著した『伏敵編』が、最初に『高麗史』を参照した研究書とされています。

構成について

『高麗史』は、大きく分けて以下のような構成を持っています。

• - 世家（巻第1 - 巻第46）: 初代太祖から恭讓大王までの各王の記録
• - 志（巻第1 - 巻第39）: 天候や天文、その他の記録が含まれ、特に音楽に関する項も存在します。

- 巻24には雅楽、巻25には俗楽、そして三国の俗楽に関する情報が記されています。

• - 表（巻第1、2の2巻）: 高麗の宗主国や高麗自身の暦年に関する表
• - 列伝: 50巻にわたって後妃や重臣、不義の者などが列伝として記されています。

特に高麗王朝の最後の時期において、恭譲王から王位を譲られた李成桂の特殊な経緯が記載されており、王禑王や昌王は正当な王権を持たないものとして扱われています。

総合すると『高麗史』の全体は137巻から成っています。この貴重な史書は高麗王朝の歴史を知る上で欠かせない資料です。

参考文献

• - 高麗史の編纂過程に関する文献が数多くあります。特に、韓国の歴史学会や国立国会図書館が所蔵する資料が研究に役立つでしょう。

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