鬼丸かおる

鬼丸 かおる

鬼丸 かおる（おにまる かおる、1949年2月7日生まれ）は、日本の著名な弁護士であり、女性として史上5人目となる最高裁判所判事を務めた人物です。東京都出身。

学歴と弁護士への道

鬼丸氏は、幼少期から高等教育まで、現在の筑波大学附属学校の系列校で学びました。具体的には、1961年に東京教育大学附属小学校（現在の筑波大学附属小学校）を卒業後、1964年に東京教育大学附属中学校（現在の筑波大学附属中学校）、そして1967年には東京教育大学附属高等学校（現在の筑波大学附属高等学校）を卒業しています。その後、1973年に東京大学法学部で私法・公法を専攻し、卒業しました。

司法試験合格後、1975年に司法修習を修了（27期）。当初は裁判官を志望していましたが、修習期間中に出産を経験したことが影響し、裁判官への任官が見送られたため、弁護士の道に進むこととなりました。弁護士登録は山梨県弁護士会で行い、弁護士事務所に所属しながら、甲府市のインハウスローヤー（企業内弁護士に類する、自治体内の弁護士）としても採用され、市からの事件を受任するという異色のキャリアをスタートさせています。1978年には、活動の場を東京に移し、東京弁護士会に登録替えをしました。

弁護士としての活躍と公職

東京に拠点を移してからも、鬼丸氏は弁護士として精力的に活動し、その専門知識と経験を活かして様々な公職を歴任しました。司法研修所においては、民事弁護の教官として後進の指導にあたりました。また、日本女性法律家協会の副会長を務めるなど、女性法曹の地位向上や活動にも貢献しました。さらに、厚生労働省の中央最低賃金審議会委員や労働保険審査会審査員、内閣府の国民生活審議会委員といった、社会保障や国民生活に関わる重要な審議会や委員会のメンバーとしても活躍しました。

最高裁判所判事として

長年の弁護士としての実績と多様な公職経験が評価され、2013年2月6日に最高裁判所判事に就任しました。これは、2012年12月26日に定年退官した須藤正彦判事の後任としての就任でした。鬼丸氏の就任は、高橋久子氏、横尾和子氏、桜井龍子氏、岡部喜代子氏に続く、史上5人目の女性最高裁判事誕生となりました。この就任により、当時の最高裁判所の裁判官15名のうち3名が女性となり、史上初めて最高裁判所の全ての小法廷に女性判事が最低1名ずつ配置される体制が整いました。

最高裁判事在任中の2014年12月14日には、最高裁判所裁判官国民審査が行われ、罷免を可とする票が4,678,087票（罷免を可とする率9.21%）となり、信任されました。

2019年2月6日に定年により最高裁判事を退官しました。

特筆すべき審理

最高裁判事として担当した審理の中で、特に注目を集めたものに煙石博氏の窃盗事件があります。この事件は、銀行の記帳台にあった封筒内の現金を盗んだとされる事案で、一審および二審では有罪判決が出ていました。しかし、鬼丸氏はこの判決に対し「重大な事実誤認」があったと指摘。証拠として提出された防犯カメラ映像に、被告が封筒に触れる場面が映っていないことを根拠に、「判決を破棄しなければ著しく正義に反する」として、自ら原判決を破棄し、無罪判決を言い渡しました。最高裁判所が自ら事実認定を行い、原判決を破棄して無罪を言い渡す例は極めて稀であり、鬼丸氏のこの判断は大きな反響を呼びました。

退官後の活動と栄典

最高裁判事退官後も、鬼丸氏はその経験を活かして活動を続けています。2019年6月26日には、株式会社LIXILの取締役に就任しました。また、2020年4月には、これまでの功績が称えられ、旭日大綬章を受章しています。

主な著書

弁護士としての専門知識をまとめた共著を複数出版しています。

『女性のための法律Q&A 若い女性のトラブル解決』（村千鶴子共著、新日本法規出版、1999年）
『成年後見の法律相談』（赤沼康弘共編著、学陽書房、2005年）
『離婚給付算定事例集 養育費・財産分与・慰謝料』（宇田川濱江, 白井典子, 中村順子共編、新日本法規出版、2010年）
『内縁・事実婚をめぐる法律実務』（曽田多賀, 紙子達子共編著、新日本法規出版、2013年）

鬼丸かおる氏は、弁護士、そして最高裁判事として、日本の司法制度において重要な役割を果たし、特に女性法曹のキャリアの多様性を示す存在と言えます。

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