鮫島純子

鮫島 純子

日本の著述家、エッセイスト。明治期の実業家として日本の近代化に大きく貢献した渋沢栄一の孫娘であり、特に晩年は、その稀有な血筋とポジティブな生き方で多くの人々の注目を集めた。1922年（大正11年）9月26日に生を受け、2023年（令和5年）1月19日に満100歳でその波乱に富んだ生涯を閉じた。

生い立ちと家系

鮫島純子は、渋沢栄一の四男である渋沢正雄を父に、男爵池田勝吉の次女・鄰子（ちかこ）を母として生まれた。父正雄は実業家として活動し、母鄰子の父方の祖父は元岡山藩主の池田茂政、母方の祖父は米沢藩主家の上杉茂憲伯爵という、旧華族の家系に連なる背景を持つ。純子の姉である博子は伯爵壬生基泰の妻となり、兄の正一は実業家・植村甲午郎の娘・和子と結婚している。

純子は、鮫島員重（さめじま かずしげ）氏と結婚した。夫員重氏は男爵鮫島具重の長男で、京都帝国大学経済学部を卒業後、海軍の文官を経て、三菱自動車工業の常務を務めた人物である。二人の間には、孫娘の鮫島弘子と鮫島圭代（水墨画家、翻訳家として活動）がいる。

渋沢家の中では、純子の従兄弟にあたる人物に、子爵を継いだ渋沢敬三をはじめ、渋沢信雄、渋沢智雄らがいる。特に、敬三の長男である渋沢雅英氏は、祖父である渋沢栄一と直接会ったことのある数少ない存命子孫として、晩年の純子と共にしばしば言及された存在だった。純子の逝去により、栄一と面識を持っていた存命の子孫は、渋沢雅英氏ただ一人となったことが報じられた。

著述活動と社会からの注目

鮫島純子は、人生の後半において、主にエッセイストとして活発な執筆活動を展開した。自身の長い経験に基づいた人生観や、困難を乗り越えるための心の持ち方などを、飾り気のない率直な言葉で綴り、多くの読者に勇気や共感を与えた。特に、高齢になってからもその前向きな姿勢を保ち続けたことから、「超ポジティブ」な生き方として注目を集め、100歳を目前に出版した『97歳、幸せな超ポジティブ生活』は多くの話題を呼んだ。他にも、日々の生活や考え方に関するエッセイを複数発表し、著述家としての地位を確立した。

2021年に放送されたNHK大河ドラマ「青天を衝け」は、純子の祖父である渋沢栄一を主人公とした作品であり、これを機に、彼女の存在は再び広く知られるようになった。ドラマが描く栄一の生涯にリアリティを与える存在として、純子は、生前の栄一と実際に触れ合った記憶を持つ稀有な人物としてメディアに取り上げられ、渋沢雅英氏と共に、明治期を生きた栄一の姿を現代に伝える貴重な語り部となった。ドラマ「青天を衝け」では、渋沢栄一の孫娘の一人として、内藤恵菜が演じる人物が登場しており、これは鮫島純子をモデルにしたものとされている。

親戚関係

鮫島純子の親戚関係は多岐にわたり、日本の歴史や財界、学界において重要な役割を果たした家系と繋がっている。渋沢家関連では、前述の従兄弟である渋沢敬三、信雄、智雄や、敬三の子で渋沢栄一記念財団理事長を務めた渋沢雅英がいる。また、経済評論家として知られる澁澤健、渋沢栄一の曾孫にあたる渋沢寿一、渋沢華子なども親戚にあたる。さらに、法学者の穂積重遠（穂積陳重の子、栄一の孫）、実業家の阪谷希一（阪谷芳郎の子、栄一の孫）、姉の夫である壬生基泰伯爵など、幅広い人脈を持っていた。こうした系譜は、日本の近代社会における渋沢家の影響力と広がりを示している。

逝去

鮫島純子は、2023年1月19日、満100歳の誕生日を迎えて間もなく、安らかに逝去した。彼女の訃報は、同年2月1日、親交の深かったフリーアナウンサーの村上信夫氏が自身のブログで公表したことで明らかになった。100年という長い生涯において、激動の時代を生き抜き、晩年は著述家として多くの人々に希望と活力を与えた鮫島純子の死は、渋沢栄一と直接関わった世代がまた一人、姿を消したことを意味するものでもあった。彼女の残した著作や、そのポジティブな生き方は、これからも多くの人々に影響を与え続けるだろう。

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