鳥の海

鳥の海：宮城の豊かな汽水湖と多様な魅力

宮城県亘理郡亘理町の太平洋岸に広がる鳥の海は、阿武隈川河口の南側に位置する汽水湖です。かつての阿武隈川の河口が堆積物によって閉ざされ、内湾状の潟湖として形成されました。仙台湾沿岸の湖沼の中では最大規模を誇り、東西約2.3km、南北約1.2kmに渡って広がるその姿は、古くから人々と深く関わってきました。

水辺の生態系と歴史

鳥の海は、鎧川排水路など複数の用水路から淡水を供給され、太平洋と短い水路で繋がることで海水も出入りしています。水深は1～3mと浅いため、大[[潮]]時には湖岸や中央部の浮島「蛭塚」の東側が干潟となります。かつてはアサリなどの潮干狩りも盛んでしたが、東日本大震災以降は中止されています。

豊富な魚介類は、多様な鳥類の生息を支えています。渡り鳥や海鳥が多く飛来することから「鳥の海」と名付けられ、古くは仙台藩主伊達家の狩場としても利用されてきました。現在では、釣りやバードウォッチングの名所として親しまれ、環境省による「日本の重要[[湿地500]]」にも選定されています。近年は自然環境の悪化が課題となっており、保全への取り組みが重要となっています。

蛭塚：歴史と自然が織りなす小島

湖中央に浮かぶ蛭塚は、面積4.38haの小島で、かつては「浮島塚」とも呼ばれていました。歴史的には疫病患者の隔離場所として利用されたという伝承も残っています。島内にはクロマツ林や湿地帯が広がり、ハマサジなどの貴重な植物群落も確認されています。現在では公園として整備され、北岸から歩道橋が架かっていますが、自然保護のため日中の通行のみ許可され、ペットの持ち込みは禁止されています。

周辺地域と文化

鳥の海の北岸には荒浜漁港があり、その背後には港町・荒浜が位置しています。水深の浅さから大型漁船の航行は困難で、主に小型漁船による沿岸漁業が行われています。荒浜は、鮭とイクラの「はらこ飯」やホッキ貝を使った「ホッキめし」など、地元ならではの豊かな食文化も育んでいます。また、毎年秋の宮城県高校陸上駅伝大会のスタート・ゴール地点としても知られています。

鳥の海の東側には荒浜海水浴場があり、消波ブロックと防波堤によって波を穏やかに保っています。仙台湾南部は夏季に波が高いため、遊泳は指定エリアに限られます。砂浜と鳥の海の間には、津波対策のための高い防潮堤が整備されています。週末には、モーターパラグライダー愛好家が吉田浜から飛行を楽しむ姿も見られます。

鳴き砂とサーフィン：隠れた魅力

2006年には、荒浜海岸に日本最大級の鳴き砂地帯が発見されました。阿武隈川河口の南側に広がる吉田浜の約3kmに渡って確認されており、その形成には仙台湾の潮流や阿武隈川の水流が大きく関わっていると考えられています。

鳥の海の東側海岸はサーフスポット「荒浜」としても知られています。鳥の海と太平洋を繋ぐ水路を挟んで北と南にサーフポイントが分かれ、防波堤や消波ブロックの影響で波質が異なります。北側は波が穏やかで初心者向け、南側は波が高く、上級者向けのスポットとなっています。

アクセス

鳥の海へのアクセスは、JR常磐線亘理駅から町民乗合自動車「さざんか号」荒浜線を利用するか、常磐自動車道・仙台東部道路亘理ICから車で約15分です。

鳥の海は、自然と歴史、そして人々の暮らしが織りなす魅力あふれる場所です。今後も、この貴重な自然環境の保全と、持続可能な観光の両立が求められています。

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