鳳来寺山

愛知県新城市に位置する鳳来寺山は、豊かな自然と歴史、文化が調和した霊山として知られています。

この山が特に有名な理由の一つは、「声の仏法僧」と呼ばれるコノハズク（アオバズク類のフクロウ）が棲息していることです。その特徴的な鳴き声は古くから人々に親しまれてきました。また、秋には山全体が鮮やかに色づき、紅葉の名所としても多くの観光客や登山者で賑わいます。山中には古刹・鳳来寺が建立されており、信仰の山としても長い歴史を持っています。

鳳来寺山の形成は、約2000万年前に遡る火山活動によるものと考えられています。旧火山帯の南端にあたるこの山は、標高695メートルとされていますが、この数値は正確には山頂標識のやや北にある瑠璃山という岩峰の標高を示しています。

山へのアクセスとして、いくつかの登山道が整備されています。最もよく知られているのは、門谷からの表参道を通るルートです。この道は、源頼朝が寄進したとされる1,425段にも及ぶ石段を登るもので、歴史を感じさせる趣があります。その他にも、大野からの東海自然歩道を利用するルートや、湯谷温泉からかつて有料道路であった鳳来寺山パークウェイを経由して山頂駐車場に至るルートもあります。これらのどのルートを利用しても、鳳来寺の本堂や鳳来山東照宮への参拝が可能です。

鳳来寺山は、その優れた自然と景観が評価され、1931年（昭和6年）に国の名勝および天然記念物に指定されました。さらに、2007年（平成19年）には日本の地質百選にも選ばれるなど、地質学的にも重要な価値を持つ山として認識されています。

山中には、推定樹齢800年以上、樹高約60メートルに達する「傘杉」と呼ばれる巨木があります。かつて日本一の高さとも言われたこの杉は、山の悠久の歴史を見守り続けています。

鳳来寺山のコノハズクの鳴き声は、日本の放送史においても特別なエピソードがあります。1935年（昭和10年）6月には、名古屋放送局がこの山のコノハズクの鳴き声の夜間生中継を成功させました。この放送をきっかけに、「声の仏法僧」がコノハズクであることを、「姿の仏法僧」（一般的にブッポウソウと呼ばれる鳥）とは異なることが学術的に明確になり、同時に鳳来寺山のコノハズクの声は全国的に有名になりました。

鳳来寺山への交通手段としては、公共交通機関では路線バスが運行されています。JR飯田線の本長篠駅や湯谷温泉駅、あるいは高速バス停から、鳳来寺山山頂行きのバスに乗車することができます。ただし、運行曜日や期間には注意が必要です。また、山麓の「鳳来寺」バス停で降りるルートもありますが、山頂まで徒歩で1時間以上を要します。自家用車の場合は、東名高速道路や新東名高速道路を利用し、国道151号を経てアクセスします。表参道や山頂駐車場への道は標識に従って進むことができます。

鳳来寺山の周辺には、鳳来寺や鳳来山東照宮といった歴史的建造物のほか、鳳来寺山自然科学博物館、鳳来寺山ろく青少年旅行村、湯谷温泉、愛知県民の森など、見どころや施設が点在しており、滞在をより豊かにしてくれます。

鳳来寺山は、自然の美しさ、地質学的な特徴、歴史、文化、そしてそこに棲む生き物たちが織りなす魅力に溢れた場所です。

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