鴨島 (島根県)

鴨島（かもしま）とは

鴨島は、現在の島根県益田市高津・中須沖の日本海にあったとされる島です。伝説によれば、1026年（万寿3年）の万寿地震によって海中に没し、現在では地元で「大瀬」と呼ばれる暗礁がその跡だとされています。しかし、鴨島の存在については諸説あり、伝説に過ぎないとする意見もあります。

鴨島の伝承

鴨島は、益田川河口から500メートルから1キロメートル沖合に位置し、東西約2キロメートル、南北約300メートルの陸繋島だったと伝えられています。島には良港があり、日本海を行き交う船で賑わっていたそうです。島には「鴨山」と呼ばれる小高い丘があり、柿本人麻呂がそこで亡くなったとされ、後に人麻呂神社が建立されました。しかし、万寿地震によって島は一夜にして海中に没し、神社や寺院、民家もろとも壊滅したとされています。

伝承に対する疑義

鴨島の伝承は口碑によるもので、同時代の史料は存在しません。鴨島や地震について述べた記録が現れるのは、400年以上後の『徹書記物語』が最初です。また、この地域では暴風雨による高潮はありますが、地震による津波の被害は少ないことも、伝承に懐疑的な見方が生まれる要因となっています。

柿本人麻呂の終焉地をめぐる論争も、鴨島伝承の真偽に影響を与えています。「鴨山の岩根し枕けるわれをかも知らにと妹が待ちつつあるらむ」という歌から、鴨山がどこにあったのか、様々な説が唱えられています。

学術調査

鴨島の謎を解き明かすため、過去に何度か学術調査が行われています。

梅原猛による調査

1972年から哲学者の梅原猛は、柿本人麻呂終焉の地として高津鴨島説を支持し、海底調査を行いました。その結果、「大瀬」から礫や茸状岩などが発見され、過去に島が存在した可能性が示唆されました。

松井孝典による調査

1993年には、地球物理学者の松井孝典を団長とする調査団が、海底探査やトレンチ調査を実施しました。その結果、海底に断層が確認され、トレンチ調査では津波によるものと思われる砂の層が発見されました。この砂層の年代測定から、万寿年間に津波が発生した可能性が示唆され、鴨島の存在を裏付ける根拠の一つとされました。

ただし、これらの調査は大津波の存在を示唆するに過ぎず、鴨島の具体的な場所を特定するには至っていません。

鴨島にちなむ名称

鴨島大橋: 高津川に架かる橋。
鴨島はまぐり: 中須海岸で採れる高級な天然ハマグリ。

まとめ

鴨島は、伝説と謎に包まれた島です。万寿地震によって海没したという伝承は、学術調査によって一部裏付けられましたが、いまだ多くの謎が残されています。今後の調査によって、鴨島の真実が明らかになることが期待されます。

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