鴨池・垂水フェリー

鹿児島県鹿児島市の鴨池港と垂水市の垂水港を結ぶフェリーで、通称「垂水フェリー」として知られています。このフェリーは、いわさきコーポレーション傘下の鹿児島交通によって運営されており、地域住民の生活を支える重要な交通手段となっています。2011年11月末までは、同じくいわさきコーポレーション傘下の大隅交通ネットワークが運営していました。

歴史

垂水フェリーの歴史は、1918年（大正7年）に町田一平氏（当時の肝属郡会議長）が鹿児島垂水間の定期船を復活させたことに始まります。当初は1日2往復、料金は40銭でした。1921年（大正10年）には垂水発動機船組合が発足し、1930年（昭和5年）には垂水発動船株式会社に改組、1935年（昭和10年）には垂水汽船株式会社に社名が変更されました。

発足当時、鹿児島湾内では九州商船と鹿児島湾内汽船が連携して航路を運営していましたが、垂水汽船の参入により、三社間で激しい競争が繰り広げられました。運賃は当初の50銭から最終的に15銭まで下がり、各社とも新鋭船を投入してスピードを競いました。その結果、知事の行政命令によって運航間隔を20分以上と制限される事態にまで発展しました。

昭和初期までの競争の結果、鹿児島湾内汽船が脱落し、以後は垂水汽船と九州商船が湾内航路の運航を担う形となりました。しかし、戦時中の1944年（昭和19年）2月6日には、第六垂水丸が沈没する事故が発生し、500名余りが犠牲となる悲劇に見舞われました。

1960年（昭和35年）には、九州商船から鹿児島湾内航路を買収し、社名を南海郵船に変更しました。この時期には南国交通が筆頭株主となっていましたが、1966年（昭和41年）にいわさきグループの傘下となり、三州自動車（現在のいわさきグループ）との一貫経営が行われるようになりました。

1968年（昭和43年）時点では、主力の鹿児島 - 垂水航路のほか、鹿児島 - 鹿屋(古江)- 大根占、鹿児島 - 海潟、鹿児島 - 古里、大根占 - 指宿 - 山川など、多くの航路が運航され、錦江湾フェリーの湾口航路と合わせて、ほぼ鹿児島湾内全域をカバーしていました。

1974年（昭和49年）には、鹿児島 - 垂水航路は鹿児島側の発着場所を鴨池港に変更し、フェリー化されました。運営母体はその後、大隅交通ネットワーク、垂水フェリー、さらに鹿児島交通と変遷しましたが、航路は1998年（平成10年）に垂水側の発着場所を垂水新港に変更したのみで、現在もほぼ同一ルートで運航されています。

一方、同時期に鹿児島港ボサド桟橋発着の旅客船航路は大幅に縮小され、鹿児島 - 垂水の一日一往復、鹿児島 - 鹿屋 - 大根占 - 山川 - 鹿児島の一日一便のみが残りました。1987年（昭和62年）には高速船を導入し、鹿児島 - 鹿屋 - 指宿に一日3往復の運航となりましたが、ほどなく減便、鹿児島港の発着場所の変更などを経て、1998年（平成10年）には休航となりました。

航路

現在の航路は、鹿児島市の鴨池港と垂水市の垂水港を約35分で結んでいます。海上距離は約15kmです。IC乗車カードである「いわさきICカード」と「RapiCa」が利用可能で、これらのカードを利用すると、通常の片道旅客運賃が1割引になります。

船舶

2011年9月のダイヤ改正による減便以降は、3隻体制で運航されています。

運航中の船舶

フェリー第七おおすみ：1991年9月竣工。全長77.0m、幅13.3m、旅客定員737名
フェリー第八おおすみ：1994年4月竣工。全長77.26m、幅13.3m、旅客定員738名
フェリー第十おおすみ：1994年6月竣工。全長77.26m、幅13.3m、旅客定員738名
フェリー第十一おおすみ：2023年9月竣工、2023年10月27日就航。全長76.9m、幅13.3m、旅客定員500名。2023年10月開催の燃ゆる感動かごしま国体では天皇・皇后の「お召し船」として使用されました。
フェリー第十二おおすみ：2023年9月進水、2024年1月12日就航。全長76.9m、幅13.3m、旅客定員500名

過去の船舶

過去には、多くの旅客船やフェリーが運航されていました。以下に主なものを紹介します。

旅客船：垂水丸、第一垂水丸（初代、2代）、第二垂水丸、第三垂水丸、第五垂水丸、第六垂水丸（後の第一垂水丸）、第七垂水丸、第十垂水丸、にしき丸、あかね丸
フェリー：フェリーおおすみ、フェリー第二おおすみ、フェリー第三おおすみ、フェリー第五おおすみ、フェリー第六おおすみ
高速船：きんこう

大隅半島直行バス路線の海上部分

鴨池港と垂水港へのアクセス路線に加え、鹿児島市と鹿屋市を結ぶ直行バスが運行されています。バス車両は乗客とともにフェリーで運搬され、鹿児島市と鹿屋市を最短距離で結んでいます。これは、車体ごとフェリーに乗り込む路線バスとしては、現存する全国唯一の例です。

南海うどん

各船内では、一部時間帯を除き、うどん店「南海うどん」が営業しており、名物となっています。船内で案内放送が行われるほか、通信販売も行っています。運営は、同じいわさきグループの白露酒造うどん事業部が行っています。

事務所

鹿児島市側：鹿児島市鴨池新町23-5
垂水市側：垂水市潮彩町1丁目

参考文献

垂水市史編集委員会『垂水市史下巻』垂水市、1978年

外部リンク

鴨池・垂水フェリー - いわさきコーポレーション

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