鶴尾

高松市 鶴尾（つるお）

高松市の中部、市役所鶴尾出張所の管轄区域に広がる鶴尾地区は、室町、室新町、東ハゼ町、西ハゼ町、西春日町、上天神町、田村町、勅使町、松並町、紙町の計10の町で構成されています。この地域は、かつて香川郡に属した鷺田村の範囲とほぼ重なっており、1940年（昭和15年）に高松市に編入されました。旧村名の「鷺田」は、現在では高松鷺田郵便局に名を残す程度で、地域を指す名称としては公私ともに「鶴尾」が広く用いられています。

地理と自然

鶴尾地区は高松市中心部の南側に隣接する立地です。2010年時点での人口は約1万2500人で、特に単身世帯の比率が高いことが特徴です。これは、中心部へのアクセスの良さや手頃な家賃から、学生や単身赴任者などが多く居住しているためと考えられます。面積は約8.79km²で、人口密度は高松市平均並みですが、中心部に近い割には比較的低い密度となっています。周辺への通勤・通学に便利なことから、ベッドタウンとしての側面を持っています。

地形は高松平野の一部ですが、北側と西側は石清尾山塊によって囲まれています。この山並みは、隣接する市中心部や弦打地区との境界ともなっています。地区の西端には香東川が流れ、中心部には御坊川が貫流しています。かつて香東川の本流が流れていた影響で、伏流水による「出水」と呼ばれる湧水が豊富で、多くの小規模な河川の源となっています。また、香川県の平野部に典型的なため池も多く、奥ノ池や沖ノ池などが点在しますが、近年は宅地化に伴い埋め立てられる沼地も見られます。主な山には室山や浄願寺山などが、川には香東川、御坊川が挙げられます。

歴史と経済の変遷

高松市への編入後、鶴尾地区は地理的な制約（ことでん琴平線が迂回、北部の山など）から、一時期は高松市中心部のベッドタウンでありながらも発展からやや取り残された感がありました。しかし、国道11号高松南バイパスや高松東バイパス、空港通りといった主要幹線道路の開通が転機をもたらしました。特に、これらの道路が交差する上天神町交差点は、県内有数の交通の要衝へと変化し、その沿線に大型ロードサイド店舗が続々と進出するようになりました。この変化は、自動車社会化による郊外化の影響を色濃く反映したものです。現在、上天神町交差点周辺の東部地域は商業集積が進み賑わいを見せていますが、地区の中部や西部には依然として農地と住宅が混在する風景が広がっています。

経済面では、江戸時代から湧水を利用した製紙業が盛んでしたが、近年は衰退傾向にあります。地区最大の工場跡地にはゆめタウン高松が、別の工場跡地には日清食品グループの工場が立地するなど、産業構造が変化しています。商業の中心は、かつての琴平街道沿いの商店街から、バイパス沿いの郊外型商業施設へと移りました。マルナカ栗林南店、イズミのゆめタウン高松、ドン・キホーテ高松、ウインズ高松などが集客の中核を担っています。さぬき麺業本社をはじめとする企業も立地しています。

教育と暮らし

地区内には高松市立鶴尾小学校がありますが、町によっては他の校区に属しており、地域の一体感は校区単位で分かれる傾向があります。少子化が進行しており、地区内にあった高松市立鶴尾中学校は生徒数減少のため2021年3月に閉校となりました。私立では大手前高松中学・高等学校、国立の香川高等専門学校、県立の特別支援学校なども地区内にあります。保育所や幼稚園も複数あります。

行政サービスは高松市鶴尾出張所が中心となり、公民館機能を持つ鶴尾コミュニティセンターは地域交流の場となっています。その他、交番、救急ステーション、郵便局、隣保・児童館、公園などが住民の暮らしを支えています。

地域を構成する町々

鶴尾地区を構成する10の町は、それぞれに異なる特徴を持ちます。栗林公園に隣接し住宅が密集する室町、東西に長く大手前高松がある室新町、町名にカタカナが使われた東ハゼ町・西ハゼ町、製紙業の名残と住宅密集地の紙町、鶴尾小学校があり農地も広がる松並町、大規模団地がある西春日町、国道が通り農地と住宅が混在する勅使町、市営団地が多くウインズ高松も立地する田村町、交通の要衝で商業集積が著しい上天神町など、多様な顔を持つ地域景観が広がっています。

交通

高松市中心部に近接していることから、幹線道路網が発達しています。国道11号（南バイパス、東バイパス）、32号（円座バイパス）、193号（空港通り）などが地区内を通り、特に上天神町交差点や峰山口交差点は交通量が多く、県内有数の結節点となっています。公共交通はバス路線が主で、ことでんバスが地区内をカバーしていますが、自家用車への依存度が高い状況です。地区内に鉄道駅はなく、ことでん琴平線は地区を迂回しています。自転車での中心部への移動も可能です。

文化、史跡、メディア

地区内には、国の登録有形文化財である愛染家住宅をはじめ、鶴尾神社、古墳、弥生時代の遺跡など、歴史的な史跡が点在しています。大規模な観光施設は少ないですが、香東川緑地はレクリエーションに利用されています。地域行事としては鶴尾神社の祭事や、町内会単位の催しなどが行われています。

テレビ放送は前田山送信所からの電波が良好に受信できますが、FMラジオは山が障害となる影響を受けることがあります。

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