鷹司院按察

鷹司院按察（たかつかさいんのあぜち）

鷹司院按察は、生没年不詳ながら、鎌倉時代に活躍した女流歌人である。彼女は後鳥羽院の側近として知られる葉室光親の娘であり、その家系には葉室光俊（真観）や定嗣といった著名な詩人が異母兄弟として存在している。彼女は兵衛督（ひょうえのかみ）とも呼ばれていた。

経歴

彼女は後堀河天皇の中宮に出仕して、歌壇においてもその才能を発揮した。特に後嵯峨院の歌壇では多くの歌を詠み、彼女の名前は当時の書物でも取り上げられている。特筆すべきは、1265年（文永2年）に『続古今和歌集』が完成した際には、すでに出家して西山に隠棲していたことである。彼女の出家の理由やその後の生活については詳しくはわからないが、歌人としての名声を築いた後の選択であった。隠棲という生き方は、彼女の内面的な世界を示唆するものであり、その後の作品にも影響を与えていると思われる。

逸話

文永年間に成立した『幻中類林』やその抜粋本である『光源氏物語本事』において、鷹司院按察の存在が言及されている。特に「鷹司院按察局福光殿」という名で、彼女が当時所持していた『源氏物語』の写本が記載されていることから、彼女が有力な伝本の所持者であったことがうかがえる。この逸話は、彼女が持っていた文学的な資本や影響力を物語るものであり、後の歌壇においても影響を与えた可能性が高い。

作品

鷹司院按察が残した作品については、いくつかの勅撰集や定数歌、歌合などに見られるが、彼女自身の私家集は現在伝わっていない。ただ、彼女の歌がどのようなものであったのかを知るために、勅撰集への参加や歌合での多くの作品が残されていることは彼女の価値を示唆している。特に、他の著名な歌人との競演や交流があったようで、彼女の活躍は歌壇の中での多様な視点を与えたと言える。

脚注

彼女の業績や存在は、彼女の家系や同時代の歌人たちとの関連により理解される。葉室光親、葉室光俊、葉室定嗣といった彼女の親族もまた、歌壇において重要な役割を果たしており、彼女の歌もまたその影響を受けていると考えられる。

参考文献

• - 新井早紀ら (2009)『寛元元年『河合社歌合』試注 －「冬月」題－』尾道大学日本文学論叢第5号
• - 今井源衛 (1961)『了悟「光源氏物語本事」について』国語と国文学
• - 安井久善 (1971)『宝治二年院百首とその研究』

鷹司院按察は鎌倉時代という特異な時代背景の中で、歌人としての役割を果たし、後の時代へと引き継がれる文化の礎となった。

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