葉室光親

葉室光親（はむろ みつちか）は、平安時代末期から鎌倉時代前期にかけて活躍した公卿です。藤原光親とも呼ばれ、権中納言・藤原光雅の次男として生まれました。最終的な官位は正二位・権中納言。没後、昭和3年（1928年）に従一位が追贈されています。

若き日の栄進

寿永2年（1183年）に六位蔵人となった後、間もなく叙爵。豊前守、兵部権大輔、左衛門権佐、防鴨河使といった官職を歴任し、順調に昇進を重ねました。正治2年（1200年）には右少弁に任じられ、翌建仁元年（1201年）には権左少弁に昇進、五位蔵人を兼任。元久元年（1204年）には左衛門権佐も兼ね、三事兼帯となりました。建永元年（1206年）には蔵人頭・右大弁を経て、承元2年（1208年）に従三位・参議に叙任され、ついに公卿の仲間入りを果たします。

その後も、建暦元年（1211年）に正三位・権中納言へと昇進しますが、建保2年（1214年）に一度権中納言を辞任。しかし、建保4年（1216年）正月に再び権中納言に還任されますが、同年6月には再び辞任。翌建保5年（1217年）には正二位に昇叙されました。この間、議政官として右兵衛督・検非違使別当・按察使を兼任しています。

後鳥羽院の側近として

光親は、後鳥羽院の側近としても重用され、年預別当や順徳天皇の執事などを務めました。また、近衛家実や藤原麗子の家司も務めています。

承久の乱と最期

承久3年（1221年）に承久の乱が勃発すると、光親は後鳥羽上皇方の中心人物として活動します。北条義時討伐の院宣を後鳥羽院の院司として執筆するなど、重要な役割を担いました。しかし、実際には上皇の倒幕計画の無謀さを憂い、幾度も諫言していたといいます。しかし、その諫言は聞き入れられることはありませんでした。

『吾妻鏡』によれば、光親は戦後、君側の奸として捕らえられ、甲斐源氏の一族・武田信光によって鎌倉へ護送される途中、駿河国車返付近で鎌倉からの使者の命を受け、甲斐の加古坂（現在の籠坂峠）で処刑されました。享年46。処刑の直前に出家し、西親と号しました。

籠坂峠を越えた静岡県駿東郡小山町須走には、光親の墓があります。北条泰時はその死後、光親が上皇を諫めるために執筆した諫状を目にし、光親を処刑したことを深く悔やんだと伝えられています。

ただし、院宣の執筆行為と伝奏として院宣発給の事実を太政官に連絡し、それを元にして太政官においても義時追討の官宣旨が作成されていることから、公家の中でも最も重い罪に問われたと考えられています。

人となりと遺産

光親は清廉で純粋な心の持ち主であり、捕らえられた同僚の坊門忠信の助命が叶ったと知った時には、心から喜んだといわれています。日記『中都記』ないし『心言記』を著していましたが、残念ながら散逸が激しく、保存状態は良好ではありません。光親は、封建道徳における忠臣であったと言えるでしょう。

静岡県御殿場市には、承久の乱で処刑された光親、一条信能、源有雅、葉室宗行、藤原範茂を祀る藍澤五卿神社があります。また、静岡県駿東郡小山町には「藤原光親卿の墓」と「藤原光親卿遥拝殿」が残されています。

系譜

父：藤原光雅
母：藤原重方の娘
妻：吉田経子（吉田定経の娘） - 順徳天皇乳母
男子：葉室定嗣（1208-1272）
男子：葉室光俊（1209-1276）
妻：（家女房）
男子：堀川顕親
妻：僧成清の娘
男子：藤原光氏
生母不明の子女
男子：親暁
男子：円成
女子：鷹司院按察
女子：土御門定通室
女子：久我通平室
女子：藤原高実室 - 藤原経通養女
女子：大炊御門師経養女
女子：藤原満子（大納言典侍） - 順徳天皇乳母
女子：葉室資頼室
女子：長資朝臣室
* 女子：滋野井公賢室

葉室光親は、激動の時代を生きた公卿として、その名と行いが後世に伝えられています。

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