鹿島家 (米子の豪商)

鹿島家の歴史と影響

鹿島家（かしまけ）は、江戸時代における伯耆国（現在の鳥取県米子市）の地下人（豪商）の家としてその名を馳せました。長い歴史を持つこの家の最初の当主は、岡山の商人である高林三郎左衛門常吉です。彼は米子に小間物の行商をするため訪れた際に、立町に定住を決意し、親類の六兵衛と共に家を構えました。高林三郎左衛門は1672年に亡くなり、その後は息子が家業を継ぐこととなります。

三代目は二代目の五男であり、長男は尾高町に養子に行ったものの、家は再び繁華を取り戻しました。この頃には、町裏に農地を持ち、地利銭として八俵の穀物を収穫していたとされています。また、店舗は間口が3間あり、その規模も当時としては立派なものでした。

商業の波は常に変動しており、四代目の治郎右衛門の時には、経済的な困難に直面しました。屋根や庇が痛んでしまう中、親から受け継いだ畑で豆腐や菎蒻の生産を行い、生活の糧を得ていました。しかし、1759年の銀札騒動によって米子市でも混乱が生じ、治郎右衛門は他の商家が困窮している様子を見かねて、米屋を開業する許可を獲得しました。この決断は彼に新たな道を切り開くことになります。

以降、鹿島家は米を中心に多様な商品を扱う商いに転換し、穀物の販売を通じて経済的に安定した状態を取り戻しました。1785年には、弟の治助を独立させるための資金を準備し、米屋を購入、事業を拡大しました。この時、利益を元にさらに土地を購入し、事業を発展させていく姿勢は、家族の繁栄を目指した明確な意図を示しています。

1799年には本家と分家が協力して『算用帳』を整備し、家の存続を目指して二十三ヵ条の起請文を定めたことが、鹿島家の強固な結束と未来への意気込みを示していました。文化的側面でも、鹿島家からは歌道や茶道に親しむ多くの人物が輩出され、家庭内での文化の承継が大切にされていたことがわかります。

さらに、鹿島家は地域社会とのつながりも強く、商人や士族、僧侶との交流を通じて、広い人脈を形成していました。このような背景から、鹿島家は商業だけでなく、地域文化の形成にも寄与していたことが伺えます。

文化的足跡と最近の発見

2011年に、鹿島家が江戸時代に米子城を預かった荒尾氏から贈られた俳句の短冊が見つかりました。この作品は幕末に鹿島家が行った米子城の大改修に対するお礼として贈られたもので、当時の人々の関係性や鹿島家の社会における地位を示す貴重な資料となっています。

鹿島家は、単なる商業的な家格としてだけでなく、地域における文化伝承や人脈の重要な役割を担っていたことが、その豊かな歴史と共に強く伝わってきます。

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