鹿島精一

鹿島精一は、1875年（明治8年）に岩手県盛岡市で生まれました。旧盛岡藩士の家に生まれましたが、幼くして父を亡くし、母の実家で育てられました。1899年（明治32年）に東京帝国大学工科大学土木工学科を卒業後、逓信省鉄道作業局に勤務しました。

同年、鹿島組組長の鹿島岩蔵の長女と結婚し、鹿島組の養嗣子となり、副組長に就任しました。1912年（明治45年）に養父の岩蔵が亡くなると、37歳で3代目鹿島組組長となり、1930年（昭和5年）には株式会社に改組し、初代社長に就任しました。その後、1938年（昭和13年）には会長となりました。

鹿島組の事業では、特に鉄道と水力開発に力を入れました。中でも、1918年（大正7年）に着工し、1933年（昭和8年）に完成した東海道線丹那トンネル工事は、当時「世紀の難工事」と言われた大事業でした。鹿島組は、鉄道工業と共にこの難工事を請け負い、完成に導きました。この事業は鹿島組にとって社運を賭けたものであり、鹿島精一は、同郷で大学の同級生でもあった鉄道工業の社長、菅原恒覧と共に力を尽くしました。

昭和に入ってからは、建設業界の社会的活動にも積極的に関与しました。1928年（昭和3年）には日本土木請負業者連合会会長に就任し、入札や契約保証金制度の撤廃、片務契約の是正、営業税の改廃、請負業者の衆議院被選挙権の獲得などに尽力しました。1940年（昭和15年）には土木工業協会理事長（現在の日本土木工業協会）に就任しました。戦後も、1946年（昭和21年）には土木学会第34代会長を務め、同年8月21日には貴族院議員に勅選され、同和会に所属しました。しかし、在任中に死去しました。

鹿島精一は、1943年（昭和18年）に緑綬褒章を受章しています。また、養嗣子に鹿島守之助（鹿島建設会長、参議院議員、北海道開発庁長官）がおり、長女の鹿島卯女は守之助の妻で、鹿島建設名誉会長を務めました。

鹿島精一は、土木工学者、実業家、政治家として、日本の近代化に大きく貢献しました。特に、鹿島組を率いて数々の難工事を成功させ、建設業界の発展に尽力した功績は大きいと言えるでしょう。

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