鹿島臨海鉄道鹿島臨港線

鹿島臨港線とは

鹿島臨港線は、茨城県鹿嶋市の鹿島サッカースタジアム駅と神栖市の奥野谷浜駅を結ぶ、鹿島臨海鉄道の鉄道路線です。この路線は、鹿島臨海工業地帯への物資輸送を主な目的として建設されました。しかし、過去には旅客営業を行っていた時期もあり、その歴史は複雑です。

概要

鹿島臨港線は、鹿島臨海工業地帯への原料や生産品の輸送を目的に敷設されました。特筆すべきは、新東京国際空港（現在の成田国際空港）への燃料暫定輸送の見返りとして、1978年から1983年までの間、鹿島神宮駅から北鹿島駅（現在の鹿島サッカースタジアム駅）、そして鹿島港南駅までの区間で旅客営業を行っていたことです。この旅客営業は、国鉄鹿島線への乗り入れを伴っていました。しかし、当時の利用者は1日あたり約20人と少なく、燃料輸送用のパイプライン完成に伴い、旅客営業は廃止されました。

路線データ

管轄（事業種別）: 鹿島臨海鉄道（第一種鉄道事業者）
路線距離（営業キロ）: 19.2km
建設主体: 日本鉄道建設公団（現 独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構）
軌間: 1067mm
駅数: 3駅（起終点駅を含む）
複線区間: なし（全線単線）
電化区間: なし（全線非電化）
閉塞方式: 特殊自動閉塞式（鹿島サッカースタジアム - 神栖間）、スタフ閉塞式（神栖 - 奥野谷浜間）
最高速度: 45km/h

歴史

1970年7月21日: 北鹿島駅 - 奥野谷浜駅間が開業。居切駅、神栖駅、神之池駅、知手駅、奥野谷浜駅が新設。
1976年1月頃: 利用実績がないため神之池駅を廃止。
1978年7月25日: 鹿島神宮駅 - 北鹿島駅 - 鹿島港南駅間で旅客営業開始。鹿島港南駅を新設。
1978年9月12日: 鹿島町（現・鹿嶋市）泉川地内の踏切付近で、線路上に生コンクリートが流し込まれる事件が発生。
1978年11月1日: 利用実績がないため居切駅を廃止。
1979年9月14日: 早朝、線路内に砂を満載したダンプカーが横転しているのが発見される。車両は盗難車で、成田空港向け燃料輸送の妨害を狙ったゲリラ事件と見られる。
1983年12月1日: 旅客営業廃止。鹿島港南駅も廃止。
1994年3月12日: 北鹿島駅を鹿島サッカースタジアム駅に改称。
2005年10月16日: 大洗鹿島線開業20周年を記念し、鹿島サッカースタジアム駅 - 神栖駅間で旅客営業復活（この日限り・3往復）。
2011年3月11日: 東日本大震災により、全線で運転見合わせ。
2011年5月25日: 鹿島サッカースタジアム駅 - 神栖駅間が復旧。
2011年6月7日: 神栖駅 - 奥野谷浜駅間が復旧し、全線復旧。
2018年3月17日: 知手駅廃止。

旅客輸送の経緯

1976年、新東京国際空港への航空燃料暫定輸送協定締結の際、地元からの要望により、国は旅客輸送の実現に努力するという条項が含まれました。これを受けて、運輸省航空局長から鹿島臨海鉄道に旅客列車運行の依頼がありましたが、鹿島臨海鉄道は貨物輸送を目的とする路線の旅客輸送条件の悪さから、当初は躊躇していました。しかし、最終的には航空局長からの要望に応じ、旅客営業を開始しました。

旅客営業期間中、1日3往復という少ない運行本数に加え、駅が市街地から離れていたこと、バスよりも割高な運賃設定などが原因で、利用者は低迷しました。1983年8月に航空燃料輸送が終了すると、鹿島臨海鉄道は速やかに旅客輸送の廃止認可を得て、同年11月30日をもって旅客営業を終了しました。

運行形態

現在、鹿島サッカースタジアム駅 - 神栖駅間では、1日に2往復の貨物列車（高速貨物列車）が運行されています。そのうち1往復は東京貨物ターミナル駅、もう1往復は越谷貨物ターミナル駅を発着しています。日曜日は東京貨物ターミナル駅発着の便は運休となり、機関車の回送列車に変更されます。また、1日1往復の貨物回送列車と、大洗鹿島線で使用される旅客車両の回送列車も設定されています。神栖駅 - 奥野谷浜駅間では、平日午前中に不定期でコンテナ列車が運行されます。

旅客営業の臨時復活

2005年以降、鹿島臨港線では、大洗鹿島線のイベントや地域振興を目的として、臨時旅客列車が複数回運行されています。これらの臨時列車は、多くの鉄道ファンや地元住民に楽しまれています。

2005年10月16日: 鹿島サッカースタジアム駅 - 神栖駅間で、3往復の旅客列車が運行。
2007年10月20日: 6000形3両編成による2往復の旅客列車が運行。神栖駅での乗降は不可。
その後: 2010年から2023年にかけて、複数回臨時列車が運行。

特に2023年には、茨城デスティネーションキャンペーンの一環として、JR東日本の車両を借りて過去の直通列車「大洗エメラルド号」をリバイバル運行したり、工場夜景ナイトツアーとして水戸駅から奥野谷浜駅まで旅客列車が運行されたりしました。これらの運行は、過去の旅客営業区間を超えて行われた初めての試みです。

駅一覧

全駅茨城県に所在

鹿島サッカースタジアム駅
神栖駅
奥野谷浜駅

(◇: 列車交換可、｜: 列車交換不可)

まとめ

鹿島臨港線は、その成立当初から貨物輸送が主な目的であり、旅客輸送は一時的なものでした。しかし、その歴史の中には、地域の要望に応じた旅客輸送や、近年におけるイベント列車運行など、興味深い側面が数多く存在します。今後も、鹿島臨海工業地帯の物流を支える重要な路線として、その役割を果たしていくことでしょう。

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