麹允

麹允（きく いん）

麹允は、西晋時代に活躍した人物で、金城郡（現在の甘粛省蘭州市）の出身です。地元の豪族である麹氏の一族として生まれ、安夷護軍として仕官しました。

生涯

西晋朝廷への貢献

永嘉5年（311年）、洛陽が漢軍によって陥落し、懐帝が捕らえられるという事態が発生。さらに長安も漢の手に落ち、西晋は存亡の危機に瀕します。このような状況下で、麹允は馮翊太守の索綝や頻陽県令の梁粛らと共に安定へ逃れ、賈疋を説得して長安奪還を計画。賈疋を平西将軍に推戴し、5万の兵を率いて長安を攻撃し、見事に奪還に成功しました。

長安奪還後、秦王司馬鄴（後の愍帝）が長安に入ると、麹允は始平郡太守に任じられます。しかし、麹允は権勢を妬み、閻鼎を弾劾して誅殺。その後、賈疋が殺害されると、雍州刺史に推挙され、西晋の再建に尽力しました。

漢軍との戦い

建興元年（313年）、司馬鄴が皇帝に即位すると、麹允は尚書左僕射、領軍将軍、西戎校尉などの要職を歴任し、雍州刺史も兼務しました。同年、漢の中山王劉曜が長安を攻撃すると、麹允は黄白城に拠ってこれを迎え撃ち、劉曜を退却させるという功績を挙げました。

その後も、劉曜率いる漢軍の侵攻に対し、麹允は勇敢に戦い続けました。建興2年（314年）には、馮翊で劉曜軍に敗北するも、夜襲によって殷凱を討ち取り、再び劉曜を退却させることに成功。また、趙染を撃破するなど、数々の戦いで武功を挙げました。

長安の陥落と最期

建興3年（315年）、劉曜が再び北地を攻撃すると、麹允は大都督・驃騎将軍に任じられ、救援に向かいます。しかし、劉曜の策略によって軍は瓦解し、長安は孤立。食糧不足に苦しむ中、麹允は愍帝を奉じて秦州の司馬保を頼ろうとしますが、索綝に反対され断念します。

建興4年（316年）、劉曜が長安に逼迫すると、長安外城は陥落。麹允は小城に撤退しますが、食糧は尽き、城内は悲惨な状況となります。同年11月、愍帝は降伏を決意し、麹允と共に漢都平陽へ連行されます。劉聡の前で司馬鄴が叩頭する姿を見た麹允は、慟哭し、劉聡の怒りを買って牢獄に繋がれ、憤りのあまり自殺しました。

劉聡は麹允の忠烈を評価し、車騎将軍を追贈し、節愍侯と諡しました。

人物像

麹允は仁に厚い人物でしたが、威厳や決断力に欠ける面がありました。そのため、呉皮や王隠といった無頼の徒にも重い爵位を与え、人心掌握を試みましたが、諸将の驕りを招き、人心は離れていったと評されています。

麹允は、西晋末期の混乱期において、西晋朝廷に忠誠を尽くし、漢軍との戦いで勇敢に戦った人物として、歴史に名を残しています。

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