趙染

趙染（ちょうせん）：前趙に寝返った悲劇の武将

趙染（生年不詳 - 314年）は、五胡十六国時代の前趙に仕えた武将です。字は文瀚。常山郡真定県（現在の河北省石家荘市正定県）の出身で、父は西晋の征西将軍であった趙統。元々は西晋に仕え、南陽王司馬模の牙門将を務めていました。

蒲坂から前趙へ

311年、司馬模は漢（前趙）軍の襲来に備え、趙染に蒲坂の守備を命じました。この時、趙染は司馬模に馮翊太守の地位を求めますが、認められませんでした。これに不満を抱いた趙染は、配下の兵を率いて前趙に寝返ってしまいます。前趙の皇帝、劉聡は趙染を平西将軍に任じ、新豊に駐屯させました。

長安攻略戦での活躍

同年9月、劉聡の命により、趙染は安西将軍劉雅と共に騎兵2万を率いて司馬模が守る長安を攻撃します。趙染は潼関で西晋軍を破り、将軍呂毅を討ち取るなど、目覚ましい活躍を見せました。さらに、下邽に進軍すると、涼州の将軍北宮純が降伏。長安を包囲し、司馬模を降伏させました。

長安奪還戦と黄白城の戦い

しかし、長安占領も束の間、西晋の賈疋や梁綜らが長安奪還を目指して挙兵。趙染は劉雅と共に鎮圧に当たりますが、攻略は成功しませんでした。313年9月、晋将の麹允が黄白城に拠って抵抗すると、趙染は劉曜と共にこれを攻撃し、幾度も破りました。趙染は劉曜に進言し、自らが精鋭騎兵を率いて長安を急襲。渭陽で晋軍を破り、長安外城に突入しました。龍尾山下の晋軍陣営を焼き払い、千人余りを殺害する戦果を挙げましたが、長安の完全な制圧には至りませんでした。

驕りによる敗北と最期

314年6月、趙染は劉曜と呼応して西征し、新豊に入ります。しかし、連戦連勝による驕りから敵を軽んじるようになります。長史の魯徽はこれを諌めますが、趙染は聞き入れませんでした。そして、索綝との戦いで敗北。趙染は魯徽の言葉を聞かなかったことを後悔し、なんと彼を処刑してしまいます。魯徽は処刑に際し、趙染の行いを厳しく非難し、その滅亡を予言しました。

その後、趙染は将軍殷凱と共に数万の兵を率いて長安に向かいますが、雍州刺史の麹允に迎撃され、戦乱の中で矢に当たり戦死しました。

一説によると、趙染は魯徽に射られる悪夢を見た翌日、実際に戦場で弩弓が命中して死亡したと伝えられています。

趙染は、その軍事的な才能によって前趙の勢力拡大に貢献しましたが、驕りによって自滅した悲劇の武将と言えるでしょう。忠言を聞き入れない者は、最終的に破滅を迎えるという教訓を、彼の生涯は示唆しています。

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