劉曜

劉曜（りゅうよう）：前趙を築いた英雄の生涯

劉曜（りゅう よう、263年 - 329年）は、五胡十六国時代の前趙の第5代皇帝。字は永明。初代皇帝劉淵の族子にあたり、「劉家の千里駒」と称えられた。西晋を滅ぼし、国家を再興するも、宿敵・石勒との華北の覇権争いに敗れ、波乱の生涯を閉じた。

若き日：千里駒の片鱗

劉曜は、幼い頃に父を亡くし、族父である劉淵に引き取られ、その子劉聡と共に養育された。8歳の時、劉淵と狩猟に出かけた際、雷鳴にも動じない落ち着きを見せ、劉淵を感嘆させた。「此奴はまさしく劉家の千里駒である」と。

幼い頃から呉漢や鄧禹といった武将を侮り、楽毅・蕭何・曹参に匹敵すると豪語。周囲は賛同しなかったが、劉聡だけは劉曜を「世祖（後漢の劉秀）や魏武（曹操）にこそ例えられる」と評価した。

洛陽での遊学と朝鮮への逃亡

20歳になると劉曜は洛陽に遊学したが、族人が事件を起こし、連座により誅殺されそうになったため、僻地へ逃亡。中書令の曹恂の助けを得て、晋陽郡太守の王忠の下に身を寄せた。王忠は劉曜を楽浪郡の朝鮮県に送り、そこで1年余りを過ごすこととなる。

生活に困窮した劉曜は、姓名を変えて県兵の食客となった。やがて朝鮮県令となった崔岳は、劉曜の才能を見抜き、素性を尋ねた。劉曜は全てを打ち明け、崔岳の庇護を受けることになった。崔岳は劉曜に衣服や書物を買い与え、手厚く保護した。

崔岳は劉曜に対し、「姿に神調を宿して生まれ、名高い才を持っている。四海をわずかな風で揺らす者は、英雄の先駆けである」と語った。後に大赦が下されると、劉曜は朝鮮から帰還し、管涔山に隠居した。

漢の将軍として：洛陽陥落と西晋の滅亡

304年、劉淵が漢王を自称して挙兵すると、劉曜はこれに従い、建武将軍に任じられた。太原攻略などで武功を挙げ、劉淵が皇帝に即位すると、龍驤大将軍に昇進。劉淵の死後、劉聡の時代には、征討大都督として重用された。

311年、劉曜は王弥や劉粲らと共に洛陽を攻撃。西晋の監軍裴邈を破り、梁国・陳留・汝南・潁川一帯を攻略した。王弥と共に襄城を攻め落とした後、洛陽へ進軍。

王弥と呼延晏が洛陽を陥落させ、懐帝を捕らえると、劉曜は王弥に略奪を禁じるよう求めたが、聞き入れられなかったため、王弥配下の王延を斬った。王弥は劉曜を攻撃したが、劉曜も応戦。内紛によって双方に多くの死者が出た。

その後、王弥と和解するも、対立は解消されず、王弥は劉曜に洛陽への遷都を進言したが、劉曜は拒否。王弥が自立を模索する中、劉曜は洛陽で諸王公や百官ら3万人以上を虐殺し、京観を築いた。皇太子司馬詮を殺害し、陵墓を暴き、恵帝の皇后だった羊献容を妻に娶った。

316年、劉曜は長安を攻略し、愍帝を降伏させ、西晋を滅ぼした。この功績により、大都督・陝西諸軍事・太宰に任じられ、秦王に封じられた。

皇帝即位と趙の成立：前趙の建国

318年、劉聡が崩御すると、劉粲が帝位を継承するが、靳準の反乱により殺害され、劉氏一族も多くが虐殺された。劉曜は靳準討伐のため平陽へ向かい、皇帝に即位。元号を光初と改元した。石勒を大司馬・大将軍に任じ、趙公から趙王へと爵位を進めた。

しかし、劉曜が靳準一族を皆殺しにしたことで、石勒との関係が悪化。石勒は趙王を名乗り、劉曜から離反した。これにより、趙を国号とする国が二つ並び立つこととなり、劉曜の国は前趙、石勒の国は後趙と呼ばれるようになった。

内政と軍事：反乱鎮圧と領土拡大

劉曜は、路松多の乱や句渠知・虚除権渠の乱といった反乱を鎮圧し、国内の安定に努めた。また、太学や小学を建設し、人材育成にも力を注いだ。過酷な労役を中止し、民衆の負担を軽減した。

322年、劉曜は親征して仇池の楊難敵を攻撃し、これを降伏させた。また、秦州刺史の陳安が離反すると、これを討伐し、斬首した。

327年、劉曜は前涼の張茂を攻撃し、降伏させた。これにより、前趙の勢力は大きく拡大した。

洛陽での大敗と最期

324年、後趙との抗争が激化。325年、劉曜は石勒との決戦に臨んだが、洛陽で大敗を喫し、捕虜となった。劉曜は石勒に「重門の盟を忘れたか」と問い詰めたが、石勒は「今日の事は天がそうさせたのだ」と答えた。

石勒は劉曜を手厚く遇したが、劉煕への降伏勧告の勅書を書かせようとした際、劉曜が拒否したため、暗殺した。劉曜の在位期間は10年であった。

人物と評価

劉曜は、身長9尺3寸の大男で、白眉に赤光を帯びた目、5尺の顎鬚を持つ異様な風貌であった。大胆で小さなことに拘らず、書物を好み、草書・隷書に精通していた。また、弓術に優れ、兵書を暗誦することができた。

『晋書』では、その能力を認めつつも「自分から味方を敵にまわしたから滅亡したのだ」と厳しく批評されている。

まとめ

劉曜は、西晋を滅ぼし、前趙を建国した英雄であったが、石勒との覇権争いに敗れ、志半ばで命を落とした。その波乱に満ちた生涯は、五胡十六国時代の動乱を象徴していると言えるだろう。

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