麹義

麴義（きく ぎ）

麴義（生没年不詳）は、後漢末期の武将であり、涼州西平郡の出身と推測されています。

正史における事跡

元々は韓馥の部将でしたが、後に袁紹に仕えました。麴義の出身地である涼州は、北方民族の侵入が頻発する戦乱の地であり、彼は羌族の戦法に通じていたため、配下の兵士も非常に勇猛だったとされています。初平元年（190年）、袁紹に反旗を翻した於夫羅を鄴の南で打ち破り、その軍事的な手腕を示しました。

初平3年（192年）の公孫瓚との界橋の戦いでは、先鋒として800人の楯持ち兵と1000張の強弩隊を率い、公孫瓚が誇る精鋭騎馬隊を打ち破るという大戦果を挙げました。さらに追撃を行い、公孫瓚軍の厳綱を討ち取り、公孫瓚の本陣を陥落させ、騎兵隊に包囲され危機に陥っていた袁紹を救出して勝利に大きく貢献しました。初平4年（193年）に劉虞が殺害されると、その遺児である劉和や劉虞の旧臣である鮮于輔らと協力し、公孫瓚に対する追撃を続けました。興平2年（195年）には幽州の鮑丘で公孫瓚を破り、本拠地である易京に追い詰めることに成功しました。

しかし、公孫瓚は易京を堅固な城として立て籠もり、長期戦の様相を呈しました。麴義軍は1年以上の対峙の末に兵糧が尽き、そこを公孫瓚に逆襲され大敗を喫しました。また、界橋の戦いでの功績を笠に着て、軍令を無視するなど、次第に傲慢な態度が目立つようになったため、遂には袁紹によって殺害されてしまいました。没年は建安元年（196年）から建安3年（198年）の間としか分かっていません。麴義配下の残党は、公孫瓚の支援を受け袁紹に反抗しましたが、すぐに鎮圧されました。

『資治通鑑』によれば、麴義の先祖は前漢の平原郡出身の尚書令である鞠譚であり、鞠譚は難を避けるために西平に移り、そこで姓を麴に改めたとされています。そのため、後に麴氏は西平において最も著名な姓の一つとなりました。また、南宋時代に書かれた『姓氏急就篇』によれば、韓遂を殺害したとされる麴演は麴義と同族であり、その後も少なくとも宋代まで高官を輩出し続けた名族であったとされています。

物語中の麴義

小説『三国志演義』においても、界橋の戦いで先鋒を務め、厳綱を討ち取るなど、正史に準拠した活躍を見せています。しかし、最期は公孫瓚配下となっていた趙雲との一騎打ちで、数合も打ち合わないうちに討ち取られてしまうという展開になっています。

参考文献

『後漢書』列伝64上袁紹伝上、列伝63劉虞伝、公孫瓚伝
『三国志』魏書6袁紹伝、魏書8公孫瓚伝
盧弼『三国志集解』（古籍出版社、1957年）
『三国演義』

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