黒旗軍

黒旗軍：19世紀後半の東アジアを揺るがした武装集団

黒旗軍（こっきぐん）は、19世紀後半に清朝の広西地方で誕生した武装組織です。その名の通り、黒い旗印を掲げた彼らは、当初は清朝への反抗勢力として活動し、その後ベトナムへと進出してフランス軍との間で激戦を繰り広げました。その歴史は、当時の東アジアにおける複雑な政治情勢と、民族運動の激しさを映し出しています。

名称の由来

黒旗軍という名前は、彼らが使用した軍旗に由来します。黒地に北斗七星が描かれた旗は、一目でそれとわかる特徴的なものでした。この旗は、彼らの存在を象徴し、また、その武勇を語る上で欠かせない要素となりました。

黒旗軍の歴史

活動初期：反清闘争からベトナム進出へ

黒旗軍の初期の活動は、清朝に対する武装闘争でした。1857年、太平天国の乱に参加していた劉永福は、広西省で三合会に合流し、約200名の兵を率いて活動を開始します。1864年に太平天国が崩壊すると、清朝の追討から逃れるように、1865年、劉永福率いる黒旗軍はベトナムのトンキン地方（現在のハノイ周辺）へと脱出しました。

1867年には、保勝（現在のベトナム・ラオカイ省バオタン県）で清軍を破るなど、その戦闘能力の高さを発揮しました。

活動中期：フランス軍との激戦

黒旗軍の活動は、1870年代後半から新たな局面を迎えます。阮朝ベトナムが、トンキンに侵攻してきたフランス軍に対抗するため、黒旗軍に助力を求めたのです。1883年から1884年にかけてのトンキン戦争（清仏戦争の前哨戦）では、黒旗軍はフランス軍と激戦を繰り広げました。

フランス軍のアンリ・リビエールを討ち取ったカウザイの戦いをはじめ、フーホアイ、パラン、ソンタイ、バクニンなど、数々の激戦でフランス軍を苦しめました。しかし、戦況は次第にフランス有利となり、ソンタイやバクニンは陥落。フンホア、トゥエンクアンも陥落しました。

1884年から1885年にかけての清仏戦争では、ベトナムに進出したフランス軍を破り、劉永福はベトナム国王より三宣副提督の地位を授けられました。トゥエンクアン包囲戦、ユオクの戦い、ホアモクの戦い、フーランタオの戦いなど、多くの戦いで黒旗軍は活躍しましたが、1885年の天津条約によって、清仏戦争は終結。黒旗軍は解散を命じられました。

活動後期：台湾での戦いと終焉

黒旗軍は、日清戦争中の1894年から1895年にかけて、再び編成されました。劉永福の指揮下、台湾民主国軍として日本軍と戦いましたが、多くの戦死者を出し、最終的には崩壊しました。この戦いを経て、黒旗軍の歴史は幕を閉じました。

その後の影響

黒旗軍は解散後も、その残党がフランス植民地主義に対するゲリラ活動を続けるなど、地域に大きな影響を与えました。彼らの戦いは、19世紀後半の東アジアにおける民族運動の歴史に、重要な一ページを刻みました。

黒旗軍の活躍は、映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズにも影響を与えています。主人公である黄飛鴻は、黒旗軍の水軍の総教練であったという設定で描かれています。

黒旗軍の戦い一覧

カウザイの戦い
フーホアイの戦い
パランの戦い
ソンタイの戦い
バクニンの戦い
フンホア陥落
トゥエンクアン陥落
トゥエンクアン包囲戦
ユオクの戦い
ホアモクの戦い
フーランタオの戦い
乙未戦争


黒旗軍は、その短い活動期間の中で、清朝、フランス、そして日本といった列強と戦い、その名を歴史に刻みました。彼らの歴史は、当時の東アジアの政治情勢と、民族運動の激しさを物語る貴重な資料です。

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