脇坂安宅

脇坂安宅（わきさか やすおり）

脇坂安宅は、江戸時代後期に活躍した大名であり、老中も務めた人物です。播磨国龍野藩の第9代藩主として、その生涯を歴史の舞台で駆け抜けました。

生涯

文化6年（1809年）、龍野藩の第8代藩主である脇坂安董の長男として生まれました。当初、家督は次弟の安坦が継ぐ予定でしたが、安坦が早世したため、31歳で嫡子となります。天保12年（1841年）に父の死を受けて家督を相続し、龍野藩主となりました。

脇坂家は、父・安董の功績により譜代大名としての地位を確立していましたが、安宅もその流れを汲み、寺社奉行、京都所司代、老中と順調に昇進していきます。特に京都所司代時代には、京都御所が炎上するという大火に見舞われましたが、その復旧に大きく貢献したことで、孝明天皇から茶室を拝領するという栄誉に浴しました。また、所司代としての職務をこなしながら、龍野の名産品であるうすくち醤油の販路を近畿地方に拡大するなど、領主としての手腕も発揮しました。

安政4年（1857年）には、老中に欠員が出たため老中に就任し、外国掛を担当します。アメリカとの間で日米修好通商条約を締結するため、朝廷の了解を得ようとしましたが、朝廷は安宅の説明に納得せず、条約締結は難航しました。この時、アメリカの全権大使であるタウンゼント・ハリスが、武家伝奏の東坊城聡長に対して、安宅を「いやらしき者」「下品」と評したことが、朝廷の外交に対する不信感を強めたという指摘もあります。

翌安政5年（1858年）、ついに日米修好通商条約が調印されます。安宅は「大日本帝國外国事務老中」という肩書きで署名しましたが、その後、桜田門外の変で大老・井伊直弼が暗殺されると、井伊政権下で要職にあった老中たちは次々と幕閣を去り、安宅も文久元年（1861年）に老中を辞任しました。

文久2年（1862年）には隠居しましたが、その年のうちに再び老中として復帰します。これは、安宅が薩摩藩と姻戚関係にあったことが影響したと考えられています。安宅は勅使の大原重徳が島津久光と共に江戸に下向した際、同じく老中の板倉勝静とともに薩摩藩邸に出向き、一橋慶喜を将軍後見職に、松平春嶽を大老にすることを確約しました。しかし、同年9月には老中を辞任し、12月には老中在任中の不手際を理由に蟄居を命じられるという、波乱に満ちた晩年を送りました。

明治7年（1874年）、65歳でその生涯を閉じました。

年譜

文化6年（1809年）：江戸の龍野藩邸で誕生
天保12年（1841年）：藩主を襲封
弘化2年（1845年）：寺社奉行に就任
嘉永4年（1851年）：京都所司代に就任
安政4年（1857年）8月：老中に就任
文久元年（1861年）11月：老中を辞任
文久2年（1862年）
4月：隠居
5月：老中として再任
9月：老中を辞任
明治7年（1874年）：死去

系譜

父：脇坂安董（1767-1841）
母：不詳
正室：毛利元義の娘
生母不明の子女
五男：脇坂安煕
女子：脇坂安足室
養子
男子：脇坂安斐（1840-1908） - 藤堂高猷の四男

登場作品

脇坂安宅は、以下のテレビドラマに登場しています。

『徳川慶喜』（1998年、NHK大河ドラマ、演：佐々木功）
『篤姫』（2008年、NHK大河ドラマ、演：櫻木健一）
『青天を衝け』（2021年、NHK大河ドラマ、演：仗桐安）

脚注

注釈
出典

関連項目

龍野神社
赦律

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