龍岡信熊

龍岡信熊：警察官から地方行政を担った人物

龍岡信熊（たつおか しんくま）は、安政2年（1856年）に薩摩国で生まれ、明治から大正にかけて活躍した警察官、政治家です。函館区長（第8代）、函館支庁長（初代）、小樽区長、小倉市長（第4代）など、様々な要職を歴任しました。その経歴は、警察官としてのキャリアから始まり、地方行政の長としてその手腕を発揮するまで、多岐にわたります。

生い立ちと警察官としてのキャリア

龍岡は、薩摩国薩摩郡平佐村（現在の鹿児島県）で生まれました。明治8年（1875年）に警察官となり、第五方面に勤務しました。西南戦争では、植木口警視率いる一番小隊の伍長として従軍し、その後の警察官としてのキャリアを築きました。明治17年（1884年）には、28歳という若さで那覇警察署長に就任。さらに2年後の明治19年（1886年）には、沖縄県警察のトップである警部長（本部長）にまで昇りつめました。その後も、宮崎県、岡山県、滋賀県、佐賀県といった各地で警察部長を歴任し、その行政能力を発揮しました。

地方行政官としての活躍

警察官としてのキャリアを積んだ龍岡は、その後、石川県書記官や石川県参事会員を経て台湾に渡り、台北県書記官や台湾総督府法院の高等法院検察官を務めました。明治29年（1896年）に帰国すると、函館市の前身である函館区の区長に任命されました。明治30年（1897年）には、勅令により函館支庁が設置されると、初代の函館支庁長に就任しました。長らくその職を務めた後、明治42年（1909年）には小樽区長に転任しました。小樽区長を大正元年（1912年）まで務めた後、九州へと移り、小倉市長に就任しました。これらの地方行政の要職を歴任し、それぞれの地域でその手腕を発揮しました。

退官後の活動と晩年

退官後は、大正10年（1921年）に厚岸町に移り、厚岸電燈会社の嘱託や政友会支部顧問を務めました。警察官としての経験と、地方行政官としての実績を活かし、晩年まで地域社会に貢献しました。龍岡信熊は、そのキャリアを通じて、警察官から地方行政官へと転身し、それぞれの分野で優れた能力を発揮した人物として、その名を歴史に刻んでいます。

龍岡信熊の経歴

1871年（明治4年）: 近衛第一大隊第八番小隊兵卒へ編入
1873年（明治6年）: 解隊
1875年（明治8年）: 四等巡査に任官、第五方面第一署詰
1877年（明治10年）: 西南戦争で植木口警視一番小隊伍長に任ぜられる
1884年（明治17年）: 沖縄県警部に任官、那覇警察署長に就任
1886年（明治19年）: 沖縄県警部長に昇進
1888年（明治21年）: 宮崎県警部長に任官
1889年（明治22年）: 岡山県警部長に任官
1891年（明治24年）: 滋賀県警部長に任官
1892年（明治25年）: 佐賀県警部長に任官
1893年（明治26年）: 石川県書記官に任官、石川県参事会員に就任
1895年（明治28年）: 台北県書記官心得に任官、台湾総督府法院彰化支部審判官兼務
1896年（明治29年）: 台北県書記官に任官、台湾総督府法院検察官兼任、北海道庁書記官兼函館区長に任官
1897年（明治30年）: 北海道庁支庁長に任官、函館支庁長兼亀田支庁長に就任
1909年（明治42年）: 函館支庁長を辞任、小樽区長に就任
1912年（大正元年）: 小倉市長に就任
1916年（大正5年）: 小倉市長を退任

栄典

龍岡信熊は、その功績により、以下の位階と勲章を受けています。

位階:
1887年（明治20年）: 正八位
1892年（明治25年）: 正七位
1893年（明治26年）: 従六位
1895年（明治28年）: 正六位
1901年（明治34年）: 従五位
1907年（明治40年）: 正五位
1909年（明治42年）: 従四位
勲章等:
1879年（明治12年）: 勲八等白色桐葉章
1887年（明治20年）: 勲七等青色桐葉章
1891年（明治24年）: 勲六等瑞宝章
1895年（明治28年）: 明治二十七八年従軍記章
1896年（明治29年）: 勲五等瑞宝章
1904年（明治37年）: 勲四等瑞宝章
1906年（明治39年）: 旭日小綬章・明治三十七八年従軍記章
1915年（大正4年）: 大礼記念章

参考文献

『官報』
『従四位竜岡信熊福岡県小倉市長就任ノ件』「竜岡信熊・履歴書」（国立公文書館）
* 大谷乾一郎 編『厚岸の史実』厚岸町、1968年。

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