龍気寺

龍氣寺（りゅうきじ）

龍氣寺は、岐阜県加茂郡白川町切井に位置する臨済宗妙心寺派の寺院です。本尊は釈迦如来で、山号を大雲山と称します。この寺院は、かつて苗木藩の領内に存在した寺院の中で、廃仏毀釈以前の寺号を今もなお名乗る唯一の寺院として知られています。

歴史

龍氣寺の起源は、江山雲公によって開かれた小さな庵に遡ると伝えられています。その後、天和3年（1683年）に、かつて天台宗の古寺があったとされるこの地に、切井村在住で苗木藩の金融を取り扱っていた小栗氏が再建を発願しました。苗木雲林寺の五世であった一桂玄珠によって、臨済宗妙心寺派の寺院として再興されました。過去帳には、「天和三年七月十七日 中興開山 一桂玄珠和尚遷化」と記されています。

龍氣寺の墓地には、歴代住職の墓碑が並んでいますが、特筆すべきは一桂玄珠の碑の傍らにある「江山雲公首座」と刻まれた碑です。この碑の裏面には、正保2年（1645年）7月14日と刻まれており、龍氣寺の歴史における重要な人物であったことが伺えます。その後、雲林寺六世の浣渓祖俊、七世の泰傳慧祥がそれぞれ二世、三世住持を務め、龍氣寺は雲林寺の住持が隠居するための寺としての役割を担っていました。

安永2年（1773年）には、十世住職の恵栽の代に過去帳が新調されました。この過去帳は、大岩九平次の母からの寄贈によるものでした。また、過去帳の裏書には、方丈（本堂）が貞享4年（1687年）5月に、厨庫が元禄6年（1693年）3月にそれぞれ造られたことが記録されています。

文化4年（1807年）には、切井の住民であった山口亀助が、寺の背後にある山に三十三観音の石仏と西国三十三ヶ所のお砂踏み所を設けました。山口亀助が医者の隠居であったことから、この山は隠居山、観音霊場は隠居山観音と呼ばれるようになりました。

明治3年（1870年）、苗木藩における廃仏毀釈の影響により、龍氣寺は廃寺となりました。当時の住職であった仁應宗義は、初めは恵那郡高山村の岩松寺に入り僧侶となりましたが、岩松寺の住職が老齢であったため、恵那郡福岡村の片岡寺に移り、大嶺の弟子となりました。その後、片岡寺の老婆に育てられたとされています。廃寺後、仁應宗義は還俗し、森平右衛門と名を改め、苗木藩知事の遠山友禄から与えられた寺領の田畑を耕し、広い建物を活用して養蚕を行いました。農閑期には、馬方や木挽きとしても働き、近隣の農民と変わらない生活を送りました。平右衛門の妻である“くわ”は、切井村で最初の産婆となりました。二人の間には子供がいなかったため、後継として武儀郡の跡部から親戚の仲吉を迎えました。

明治17年（1884年）、苗木藩によって神道に改宗させられていた切井村の有志17名が、恵那郡蛭川村奥渡の高徳寺の檀徒となった際、その中の一人が森仲吉でした。

仁應宗義（森平右衛門）は、明治28年（1895年）、龍氣寺の跡地に既に民家が建っていたため、元の東光山薬師寺の敷地跡に、土岐郡釜戸村の天猷寺の村雲和尚の尽力により、宮城県松島瑞巌寺の塔頭であった五葉庵を切井に移転させる形で寺院を再建しました。再興後は、蛭川村奥渡の高徳寺の檀徒であった人々の多くが五葉庵の檀徒となりました。さらに、廃仏毀釈によって昌壽寺を失った赤河村の檀徒も加わりました。

廃寺からの復興を第一段階終えた仁應宗義（森平右衛門）は、その後、住職を法嗣の宗哲に譲りました。その後、釜戸村の天猷寺の朴雲和尚の頼みにより、土岐郡土岐村の禅躰寺の堂守を勤め、次いで土岐郡大湫村の宗昌寺に1年間住しましたが、明治44年（1911年）に切井村に戻り、7月15日に73歳で亡くなりました。遺偈には、「為僧為俗　七十余年　末後一句　驚倒大千。喝。明治四十四年春日　仁應宗義」とあります。

大正15年（1926年）5月12日、五葉庵は旧称である龍氣寺に寺号を復することを許されました。

龍氣寺は、廃仏毀釈の際に隠されたことで難を逃れた近隣で信仰されていた仏像を複数所蔵しています。また、龍氣寺が保管している応永年間に造られた切井栃平地蔵堂の銅製鰐口には、「奉施入鰐口、切井栃平地蔵堂常住、応永二十二年四月廿九日」と銘が刻まれていますが、いつから保管されているかは不明です。

この鰐口は、昭和41年（1965年）3月に白川町の有形文化財に、昭和42年（1966年）6月には岐阜県の重要文化財に指定されました。さらに、龍氣寺が所蔵する達磨大師像は、明治33年（1900年）に龍氣寺を復興した際に、赤河村の某家から招来されたもので、苗木藩の廃仏毀釈の際に某家で秘匿されていたものと考えられています。

参考文献

『白川町誌』　第五章　宗教　第三編　生活と文化　四　元蘇原村　▽切井の大雲山竜気寺　p878～p879・廃寺の復興　切井竜気寺　p911～p913　白川町誌編纂委員会　1968年
『八百津町史』 史料編　第七節　苗木藩の廃仏毀釈について　切井龍気寺　p230～p231 八百津町史編纂委員会 1972年

関連項目

苗木藩
青山景通#廃仏毀釈

外部リンク

大雲山　龍気禅寺　公式サイト
大雲山　龍氣寺　白川おとなう

脚注

* 切

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