龍泉寺 (名古屋市瑞穂区)

龍泉寺（りょうせんじ）

愛知県名古屋市瑞穂区井戸田町に位置する龍泉寺は、曹洞宗に属する歴史深い寺院です。本堂には薬師如来像が祀られ、脇仏として地蔵菩薩像と不動明王像が安置されています。現在、龍泉寺は圓通寺の末寺としています。

歴史的背景

龍泉寺の起源は平安時代にさかのぼります。伝承によれば、伝説の僧侶行基が開山した真言宗の薬師寺が最初とされ、その後、龍泉庵などのいくつかの庵が建立されました。しかし時とともに多くが衰退し、平安時代の応仁の乱の時期に龍泉庵が現在の龍泉寺に変わったとされています。その後、室町時代末期に真言宗から曹洞宗に改宗し、現在の圓通寺の末寺となりました。

この寺は源義経に関連する興味深い逸話を持っています。義経は源頼朝の援軍に向かう途中、龍泉寺を訪問し、ここで産土の神である津賀田神社に参拝しました。彼は武運を祈願しましたが、その際に雷雨に見舞われたと言われており、般若心経を唱え、写経を行った後、雷は収まりました。この伝説は、信仰の力が災厄を退けた象徴的な出来事とされています。

また、平清盛に流罪となった藤原師長が治承3年（1179年）にこの地を訪れ、龍泉寺の庭を愛したと伝えられています。その後、江戸時代の1713年には、師長の逸話にちなんで「槐隠堂」の額が掲げられましたが、1945年の名古屋大空襲によってこの建物は消失し、現在はその面影はありません。

1955年には、名古屋市観光協会の支援により、龍泉寺は大名古屋十二支の恵当寺となり、辰年を守る普賢菩薩の霊場に指定されました。なお、愛知県名古屋市守山区にある同名の龍泉寺（りゅうせんじ）とは異なる寺院で、宗派や読み方も異なっています。

亀井水の伝説

境内には、亀井水という井戸があります。これは源頼朝が産湯に使ったとされており、山号の「亀井山」はこの井戸に由来しています。周辺にはかつて名鉄井戸田駅がありましたが、現在は廃駅となっています。案内板には「府城の南一里三十町、本井戸田なる村あり。井水すべて清らかなり。」という文言が記されています。この亀井水は、頼朝の産湯の水と言われており、戦後には多くの亀が集まることで有名でした。

藤原師長との関係

藤原師長は流刑にされ出家した後、龍泉寺で得度し、理覚と名乗りました。特筆すべきは彼が琵琶の達人であり、熱田神宮で演奏を行った実績を持つことです。副官であった横江深光の娘に対する愛情からの悲劇的なエピソードも有名です。師長の娘は彼が帰京する際に琵琶を託され、彼を追いかけるものの、結局追いつけずに自害したと伝えられています。龍泉寺の近くには、彼の娘の墓があり、そこを訪れる人々によって祀られています。また、彼の院号が妙音院であることにちなみ、瑞穂区には妙音通や師長町などの名称が残されています。

境内の特徴

龍泉寺の境内には、名古屋大空襲の名残を留める歯痛地蔵や大黒塚跡が存在しています。歯痛地蔵は戦争の犠牲者を偲ぶ象徴で、顔や片手の一部が欠けています。

• - 歯痛地蔵
• - 大黒塚跡（1983年まで原形が残っていた）
• - 普賢菩薩像（大名古屋十二支辰年の守護本尊）

アクセス

名古屋市営地下鉄名城線 妙音通駅から北へ約250m（徒歩で約3分）
名鉄名古屋本線 堀田駅から東へ約1.1km（徒歩で約13分）

このように龍泉寺は、多くの歴史と信仰のエピソードに彩られた特別な場所として、訪れる人々を迎え入れています。

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