普賢菩薩

普賢菩薩について

普賢菩薩（ふげんぼさつ）は、大乗仏教における重要な菩薩の一尊です。サンスクリット語では「サマンタバドラ」といい、「普く賢い者」という意味を持ちます。この名前が示すように、普賢菩薩は世界にあまねく現れ、仏の慈悲と智慧を顕して人々を救済する賢者として崇められています。

概要

普賢菩薩は、文殊菩薩とともに釈迦如来の脇侍として祀られることが多く、釈迦三尊像として知られています。また、法要においては四七日（四十九日）の仏としても重要視されています。三昧耶形は剣や五鈷杵であり、種子字は「アン」です。

法華経においては、普賢菩薩は六牙の白象に乗ってあらゆるところに現れ、衆生を救うと説かれています。このため、行動するという意味で「行の菩薩」と呼ばれ、理法と行願を象徴する存在とされています。密教においては、菩提心（真理を究めて悟りを求めようという心）の象徴としても重要視されています。また、「遍吉（へんきち）」という別名も持ち、この名前には滅罪の利益があると言われています。

像容と作例

普賢菩薩は、独尊としては蓮華座に乗せた六牙の白象に結跏趺坐して合掌する姿が一般的です。密教においては、左手に宝剣を立てた蓮茎を持つ姿や、金剛薩埵と同じく左手に五鈷鈴、右手に五鈷杵を持つ姿で表されることもあります。その他にも、如意や蓮華、経典を持つ作例も見られます。

日本においては、10世紀頃から独尊として祀られるようになりました。浄土思想の広まりとともに、女性も往生できると説く「法華経」が支持を集め、極楽往生を願う女性たちから特に篤い信仰を得るようになりました。絵画や彫像の作例が多く、彫像では大倉集古館に所蔵されている平安時代後期の木像（国宝）が有名です。

また、より密教的な尊格として「普賢延命菩薩」という菩薩も存在します。これは22の手を持つ強力な尊とされ、日本でも多くの作例が見られます。絵画作品としては、東京国立博物館所蔵の普賢菩薩騎象像（国宝、平安時代後期）が代表的です。その他、鳥取県豊乗寺（ぶじょうじ）本（国宝）や奈良国立博物館本（重要文化財）などもよく知られています。

眷属

法華経信仰の文脈では、普賢菩薩は十羅刹女（じゅうらせつにょ）とともに描かれることがあります。これは、法華経において普賢菩薩と十羅刹女が共に「法華経を護持する者を守る」と誓っていることによります。また、十羅刹女の母である鬼子母神（きしもじん）も眷属として扱われることがあります。初期の十羅刹女は唐装束で描かれることが多いですが、日本の文化の影響を受けて和装の羅刹女の作例も多く見られます。

真言

普賢菩薩の真言は、「オン・サンマヤ・サトバン（Oṃ samayas tvaṃ）」です。

霊場

中国・四川省の峨眉山（がびさん）は、普賢菩薩の霊場として知られています。

経典

普賢菩薩に関連する主な経典には、以下のものがあります。

華厳経
法華経
仏説観普賢菩薩行法経

フィクションにおける扱い

小説『封神演義』には、普賢真人（ふげんしんじん）という仙人が登場します。この作品では、普賢真人は後に仏門に帰依し、普賢菩薩になったとされています。同様に、文殊広法天尊（もんじゅこうほうてんそん）が文殊菩薩になったとされています。

関連事項

普賢延命菩薩
法身普賢
普賢寺
普賢真人

外部リンク

普賢菩薩 古寺散策
* 仏教の勉強室 普賢菩薩 - ウェイバックマシン

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