龍角寺岩屋古墳

龍角寺岩屋古墳とは

龍角寺岩屋古墳は、千葉県印旛郡栄町龍角寺に所在する方墳で、龍角寺古墳群を構成する115基の古墳のうちの一つです。この古墳は、その規模の大きさから古墳時代終末期を代表する方墳として知られ、「龍角寺古墳群・岩屋古墳」として国の史跡に指定されています。

立地と築造年代

古墳は印旛沼北岸の標高約30メートルの台地上に位置しています。築造年代については、古墳から出土品が発見されていないため、石室の構造などから7世紀前半または中頃とする説が提唱されています。特に、岩屋古墳の前に築造されたと考えられる浅間山古墳の築造時期が、7世紀初頭と7世紀第二四半期の2説に分かれていることが、岩屋古墳の築造年代を特定する上で難しさをもたらしています。

墳丘の規模と構造

墳丘は3段に築成され、一辺約78メートル、高さ約13.2メートルを測ります。周囲には幅約3メートルの周溝と周堤が巡っており、その規模は同時期の大方墳である春日向山古墳（用明天皇陵）や山田高塚古墳（推古天皇陵）をも凌ぎます。方墳としては、古墳時代全体を見ても、5世紀前半に築造された桝山古墳に次ぐ全国で2番目の規模を誇ります。

石室の構造

南面には、10メートル間隔で2基の横穴式石室が並んでいます。西側の石室は奥行き約4.23メートル、奥壁幅約1.68メートル、高さ約2.14メートル。東側の石室は西側よりやや大きいものの、現在は崩落しています。石室の石材には、この地域で産出される貝の化石を多く含む凝灰質砂岩（木下層）が用いられています。

龍角寺古墳群における位置づけ

岩屋古墳は、114基の古墳からなる龍角寺古墳群に属しています。この古墳群は6世紀から築造が開始されたと考えられ、当初は小規模な前方後円墳や円墳が中心でした。7世紀前半になると、印旛沼周辺地域最大の前方後円墳である浅間山古墳が築造され、その後に岩屋古墳が築造されたとされています。

浅間山古墳以前は、印旛沼に面した場所に古墳が築造されていましたが、浅間山古墳以降は香取海方面からの谷奥の丘陵上に築造されるようになりました。この立地の変化は、印旛沼よりも香取海方面を意識した結果と考えられています。また、岩屋古墳の後には、みそ岩屋古墳などの方墳が7世紀後半にかけて築造されたと考えられています。

詳細な構造と特徴

岩屋古墳は、墳丘が三段築成されており、一段目と二段目が低く、三段目が最も高くなっています。墳丘の周囲には南側を除く三方に周溝が巡り、周溝の外側には外堤が見られます。2008年の測量調査では、墳丘南側の谷側から墳丘に向かって斜路が作られていたことが判明しました。

埋葬施設である横穴式石室は、羨道のない両袖式の玄室のみで構成されており、東側の石室は長さ約6.5メートル、西側の石室は長さ約4.2メートルです。石室には、木下貝層の砂岩が用いられています。石室内には、浅間山古墳でも使用された筑波山近郊産の片岩が使われており、このことから、浅間山古墳、岩屋古墳、岩屋古墳以外の古墳という順序で築造されたと考えられます。

古墳の歴史と現状

古文書によると、岩屋古墳の横穴式石室は1591年には既に開口していたと考えられています。また、石室が開口していたことから、椀貸伝説などの民間信仰の対象にもなっていました。しかし、本格的な発掘調査は行われておらず、副葬品はこれまで一切出土していません。

沿革と史跡指定

1970年には明治大学によって石室の実測や墳丘の地形測量が行われ、2007年には栄町教育委員会による清掃地形測量が行われました。1941年に国の史跡に指定され、2009年には龍角寺古墳群および周辺地形を含む広範囲な地域が追加指定され、『龍角寺古墳群・岩屋古墳』として史跡の名称変更が行われました。

その他

古墳の住所は龍角寺ですが、古墳群の名称には通常「竜」の字が用いられています。また、近隣にある龍角寺という寺は「龍」の字が用いられています。古墳の頂上には一等三角点が設置されています。

まとめ

龍角寺岩屋古墳は、古墳時代終末期の方墳として、その規模や構造、歴史的背景から重要な遺跡です。周辺の古墳群との関連性や、今後の発掘調査によって、新たな事実が明らかになることが期待されます。

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