山田高塚古墳

山田高塚古墳について

山田高塚古墳（やまだたかつかこふん）は、大阪府南河内郡太子町山田に所在する古墳です。高松古墳（たかまつこふん）という別名も持ち、磯長谷古墳群を構成する一つとして知られています。形状は、方墳または長方形墳とされており、その歴史的背景と構造から多くの関心を集めています。

概要

この古墳は、二上山山麓の磯長谷に位置し、金剛山地から続く丘陵の西端に築かれています。江戸時代の修陵によって大規模な改変が行われたほか、現在は宮内庁の管理下に置かれています。宮内庁書陵部による調査も実施されており、墳丘の構造や歴史的背景について研究が進められています。

墳丘は3段に築かれており、1段目は正方形、3段目は長方形という特徴的な形状をしています。しかし、1段目の形状には後世の改変の可能性が指摘されています。墳丘の表面には貼石が見られますが、埴輪は確認されていません。埋葬施設については詳しいことはわかっていませんが、東西に長い墳丘の特徴から、横穴式石室が東西に2基並んでおり、それぞれが南側に開口していたと推定されています。古い文献には、いずれかの石室内部に石棺が2基あったという記述も残っています。

被葬者については明確な記録が残っていませんが、現在は宮内庁によって第33代推古天皇と竹田皇子の合葬陵墓として治定されています。磯長谷には、二子塚古墳や葉室塚古墳といった長方形墳または双方墳も存在しており、これらの古墳との共通性も指摘されています。また、磯長谷には推古天皇陵以外にも敏達天皇、用明天皇、孝徳天皇陵、そして聖徳太子墓も存在し、これらは「梅鉢御陵」と総称されています。

歴史

この古墳に関する主な歴史的な出来事は以下の通りです。

康平3年（1060年）: 『扶桑略記』によると、「推古天皇山陵」で盗掘があったとされています。
1979年（昭和54年）: 境界の石垣設置工事に伴い、宮内庁書陵部による調査が実施されました。
1989年度（平成元年度）: 墳丘外表調査が宮内庁書陵部によって行われました。
2012年（平成24年）2月23日: 考古・歴史学会の代表者による立ち入り調査が行われました。

構造

3段築成の墳丘は、1段目が東西59メートル・南北55メートルとほぼ正方形ですが、3段目は東西34メートル・南北25メートルと東西に長い長方形です。また、3段目は急斜面をなしています。墳丘全体の高さは11メートルです。特に1段目の形状は春日向山古墳（用明天皇陵）と類似しているため、江戸時代の修陵の際に春日向山古墳を参考にして改変された可能性が指摘されており、元々は1段目も東西に長い長方形であったと考えられています。

墳丘の南側には前庭部状の平坦地があり、それを含めた陵域全体は東西75メートル・南北72メートルを測ります。墳丘の東側には空堀（幅8-9メートル）が確認できますが、1979年の調査によれば、この堤は後世に水田上に造られたものとされています。

被葬者について

山田高塚古墳の実際の被葬者は不明ですが、宮内庁は第33代推古天皇と子の竹田皇子の合葬陵墓としています。『日本書紀』には、推古天皇が628年に崩御し、遺詔によって竹田皇子の陵に葬られたとありますが、具体的な所在地や陵名に関する記述はありません。一方、『古事記』には、推古天皇の陵が「大野岡上」から「科長大陵」に改葬されたとありますが、竹田皇子との合葬については触れられていません。

『延喜式』には、推古天皇陵が遠陵の「磯長山田陵」として記録されており、河内国石川郡に位置し、陵戸と守戸が置かれていたとされています。また、『扶桑略記』には1060年に「推古天皇山陵」で盗掘があったとの記述があります。

元禄時代の探陵では、堺奉行がこの古墳の存在を報告しています。古書には、横穴式石室内に石棺が2基あり、右が推古天皇、左が竹田皇子の棺であったという記述がありますが、本古墳には2基の石室が存在すると推定されているため、この記述だけで古墳全体の性格を断定することは難しいとされています。

なお、推古天皇と竹田皇子の真の合葬陵墓については、東方約200メートルの二子塚古墳とする説や、改葬前の陵墓（大野岡上）を植山古墳とする説もあります。

現地情報

所在地: 大阪府南河内郡太子町大字山田

交通アクセス:

バス: 近鉄長野線喜志駅から金剛バスに乗り、「御陵前」バス停で下車後、徒歩約200メートル

周辺:

磯長谷古墳群
敏達天皇河内磯長中尾陵
欽明天皇皇后石姫皇女磯長原陵（太子西山古墳）
用明天皇河内磯長原陵（春日向山古墳）
聖徳太子磯長墓（叡福寺北古墳）
孝徳天皇大阪磯長陵（山田上ノ山古墳）

参考文献

太子町教育委員会 (1994). 『王陵の谷・磯長谷古墳群 -太子町の古墳墓-』.
宮内庁書陵部 (1991). 『書陵部紀要第42号』.
宮内庁書陵部 (1996). 『書陵部紀要所収陵墓関係論文集 3』. ISBN 4311300344.
吉川弘文館. 『国史大辞典』.
平凡社 (1986). 『日本歴史地名大系 28 大阪府の地名』. ISBN 458249028X.
東京堂出版 (1989). 『日本古墳大辞典』. ISBN 4490102607.
講談社. 『国指定史跡ガイド』.

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