龍騰断橋

龍騰断橋：歴史を刻む鉄道橋の遺構

龍騰断橋（りゅうとうだんきょう）は、台湾の苗栗県三義郷に位置する、かつての台湾総督府鉄道縦貫線（後の台中線）の一部であった鉄道橋の遺構です。かつては魚藤坪断橋（ぎょとうへいだんきょう）とも呼ばれていました。この橋は、1908年に全線開通した縦貫線の一部として建設されましたが、1935年の新竹・台中地震によって大きな損傷を受け、その一部が崩壊し、現在の断橋の姿となりました。

名称の由来

この地域の名称「魚藤坪」は、原住民である高砂族が用いていた植物「魚藤」に由来します。魚藤は、デリス属の植物で、天然のロテノンを含み、魚を捕獲する際に毒として用いられていました。開墾時に沼の主である鯉による被害を鎮めるため、魚藤の毒が使用されたという伝承が残っており、その名残として「魚藤坪」という地名が用いられるようになりました。その後、戦後に村が設立される際に「龍騰」と改められました。

構造

龍騰断橋は、旧山線の167信号場の南側に位置しており、建設当時は総額122,514円が投じられました。橋全体は、北から南に向かって下り勾配となっています。橋脚は8本、桁は5本で構成され、全長は約164.8メートルです。中央部は、アメリカン・ブリッジ社製の鋼材を用いたボルチモアトラス橋であり、その両端は煉瓦造りのアーチ橋で繋がっていました。トラス部分は、セオドア・クーパーとチャールズ・シュナイダーによって設計されました。煉瓦アーチ橋の橋脚は、北部が4本、南部が2本で構成されており、北側のアーチ橋は緩やかなカーブを描いています。

歴史

台湾縦貫線の建設は、資材を全て日本から搬入する必要があったため、南部と北部の開通が比較的早かった一方、現在の旧山線を含む苗栗と豊原の間は工事が難航しました。この区間の工事は、総督府臨時台湾鉄道敷設部工務課三叉河出張所が担当し、資材搬入のために軽便鉄道と資材運搬線が建設されました。軽便鉄道は、9kgレール、軌間495mmの複線で、内社川と大安渓北岸までの支線がありました。

年表

1904年（光緒30/明治37年）：
5月17日 - 三叉河からの大安渓北岸・内社川までの運搬線が完成。
10月 - 鉄橋の建設が開始。
1905年（光緒31/明治38年）：
5月15日 - 三叉河以南の軽便鉄道と後里庄以南の縦貫線が営業開始。
1906年（光緒32/明治39年）：
4月30日 - 着工。
1907年（光緒33/明治40年）：
6月1日 - 竣工。
1908年（光緒34/明治41年）：
4月20日 - 縦貫線が全線開通。軽便鉄道が撤去。
1935年（昭和10年）：
4月21日 - 新竹・台中地震により、全線が被害。鉄橋も橋脚が損傷。
7月17日 - 余震により、南岸第7橋脚が崩落し、両側の桁が落下。
1938年（昭和13年）：
7月15日 - 鉄橋の西側に魚藤坪鉄橋が新設され、山線が全線復旧。
1999年9月21日 - 921大地震により、残っていた煉瓦橋（北岸第4橋脚）のアーチが崩落。
2000年 - 内政部が震災紀念物に指定。
2001年 - 土木学界により台湾十大土木史蹟に選定。
2003年11月25日 - 県定古蹟に登録。
2010年～2011年 - 断橋前に臨時駅の龍騰駅が設置。
2019年7月1日 - 龍騰駅が旧山線レールバイクの発着地として営業再開。

現在の龍騰断橋

現在、龍騰断橋は、その一部が崩壊した姿で残されており、歴史的建造物として多くの観光客が訪れます。かつての鉄道橋の姿を留める煉瓦の橋脚や、崩落したアーチの跡は、地震の凄まじさと、歴史の変遷を物語っています。付近には、旧山線レールバイクの発着地として龍騰駅も再開しており、観光地としての魅力が高まっています。

関連事項

セオドア・クーパー
チャールズ・シュナイダー
台湾古跡一覧
旧山線
魚藤坪鉄橋
碓氷第三橋梁（同時期に造られた日本のレンガ橋）
一ノ戸川橋梁（同時期に造られた日本の上路式ボルチモアトラス橋）

外部リンク

龍騰斷橋 交通部観光局 （日本語）
記憶苗栗舊山線 - ウェイバックマシン（2018年10月24日アーカイブ分） （正体字中国語）
龍騰斷橋 - 殘缺之美 （正体字中国語）
* 詳細景點介紹 - 龍騰斷橋 三義郷公所 （正体字中国語）

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