龠部

龠部（やくぶ）についての詳細

龠部（やくぶ）は、漢字の部首の中で重要な役割を果たすグループの一つであり、康熙字典の214部首の最後、214番目に位置します。この部首は、竹製の管楽器の一種である笛を象徴しており、後の文字「籥」へと発展しました。この「龠」という字は、現在のパンパイプ（排簫）のように、複数の管を束ねた楽器を指します。音楽における調和やハーモニーの象徴として用いられ、古代中国の音律においても重要な意味を持つ容量の単位として扱われています。

龠の音律の理論

古代中国の度量衡の理論において、「龠」は音律や度量衡の関連を示す重要な単位です。特に黄鍾秬黍説という音律の理論において、1200粒の黍が収められる「黄鍾」と呼ばれる管が、1龠の音律を持つとされ、この特異な音の特性から音と容量との相関関係が根づきました。このようにして、2龠が1合であるという考え方が確立され、音楽には計量的な性質があることが示されています。

龠部の漢字とその構造

部首「龠」は、その形状にも象徴的な意味があります。小篆における表現については『説文解字』に記載されており、3つの穴を持つ「品」と「侖」（秩序を表す文字）が合成された会意文字と位置付けられています。一方、金文などの古文字の研究を進めると、「△」の部分は後に追加されたものであることがわかります。この“△”部分は、人間の口や管を束ねる形状を表現するもので、楽器の音を出す様子を示していると言われています。さらに、龠部は音楽や和声に深く結びつく漢字を包含しており、音律に関連した意味を持つ文字が多く見受けられます。

日本と他国における部首の呼称

部首「龠」の通称は地域によって異なります。日本では「やく」や「ふえ」と呼ばれ、韓国では「피리약부（piri yak bu）」という名称がつけられています。英語圏では「Radical flute」とされています。このような部首の名称は音楽の面からもその特性を引き出していることに興味深い点があります。

異なる漢字や発音

「龠」という文字自体は、音としては「ヤク」、訓読みとしては「ふえ」とされます。他言語での発音も特筆すべき点です。中国語の普通話では「yuè」と発音され、粤語では「joek6」となります。朝鮮語では「약（yak）」と発音し、訓読みは「피리（piri）」で、いずれも楽器に関連する言葉です。また、部首に関連する漢字として「龢（和）」や「龥」、さらに「𪛖」のような異体字も存在します。

まとめ

龠部は、ただの漢字の部首に留まらず、音楽や音律、さらには古代の度量衡の理論とも密接に関連していることをご理解いただけるでしょう。その形成や発展の背景には、音楽文化や社会の秩序、さらにはその象徴的な意味が込められています。日本の常用漢字や印刷標準字体には収録されていないものの、歴史的には非常に重要な位置付けを持つ部首として、今日に至るまでの漢字文化に影響を与えています。

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