16型フリゲート

16型フリゲート：戦後イギリス海軍の暫定対潜戦力

16型フリゲートは、イギリス海軍が第二次世界大戦後に直面した新たな脅威、すなわち水中高速潜水艦に対抗するために、既存の駆逐艦を改装して建造したフリゲート艦です。15型フリゲートと同様に、戦時急造型の駆逐艦をベースとしていますが、より廉価な2等艦として位置づけられています。その背景には、戦後の財政難と、対潜艦の早急な戦力化を求めるイギリス海軍の事情がありました。

開発の背景

第二次世界大戦中、イギリス海軍は大西洋の戦いで大きな損害を被りました。1945年までに、浮上した潜水艦の脅威は減少しましたが、1943年頃からドイツ海軍が新世代の水中高速潜水艦の開発を進めているという情報がもたらされました。特にUボートXXI型は、潜航状態で15～18ノット、ヴァルター機関搭載艦では26ノットという高速を発揮可能であり、当時のイギリス海軍の主力護衛艦であったブラックスワン級スループでは、対応が困難でした。

このような状況に対応するため、1943年中盤から新型フリゲートの検討が開始され、後に12型（ホイットビィ級）と14型（ブラックウッド級）として結実します。しかし、1949年の時点では、有事の際にフリゲート182隻が必要と見積もられており、これは1947年時点の護衛艦552隻という見積もりに比べれば減少したものの、依然として多数の艦艇が必要でした。さらに、対潜艦に求められる大出力主機の開発が遅れたため、12型の建造は当初の計画通りには進みませんでした。

一方で、第二次世界大戦中には多数の戦時急造駆逐艦が建造され、終戦時にイギリス海軍が保有する駆逐艦は245隻に達していました。1947年春の決定に基づき、大戦前に建造された艦は速やかに退役する一方、残った艦は、上記の膨大な需要を補うための暫定的な措置として、護衛艦に改装されることになりました。その中で、まず12型と同等の性能を持つ1等艦として設計されたのが15型でした。

しかし、15型の改装にはかなりの費用がかかるため、1949年1月には、より限定的な改装基準が検討され始めました。その結果、1949年3月に海軍本部委員会に提示されたのが、本級、すなわち16型フリゲートです。

艦の構造と装備

16型フリゲートは、15型フリゲートよりも改装範囲が限定的です。上部構造はほとんど手が加えられておらず、駆逐艦時代と同じ開放型の艦橋が採用されています。また、船首楼甲板もほぼ駆逐艦時代のままです。電源の強化も限定的で、第2ボイラー室に50キロワットのディーゼル発電機1基が追加されたのみです。

艦砲は15型と同様の45口径10.2cm連装砲（4インチ砲Mk.16）ですが、15型では艦後方に搭載されたのに対し、本型では艦橋直前に配置されました。方位盤は、15型に搭載された盲目射撃可能なCRBFではなく、より簡素なSTD（Simple Tachymetric Director）が搭載されました。

対潜兵器については、15型が新型のリンボー対潜迫撃砲を搭載したのに対し、本型は戦中世代のスキッドが搭載されました。駆逐艦時代の21インチ4連装魚雷発射管は維持され、新開発のMk.20「ビダー」対潜誘導魚雷の運用も想定されていましたが、この魚雷の開発は後に中止されました。

その他の特徴

パキスタン海軍に譲渡されたO級駆逐艦「オンズロー（HMS Onslow）」（パキスタン名「ティプー・スルタン（PNS Tippu Sultan）」）と「オンスロート（HMS Onslaught）」（同じく「トゥグリル（PNS Tughril）」）も、1957年ないし1959年にイギリスに返還された後、16型フリゲートに準じた改装が施されています。

まとめ

16型フリゲートは、戦後のイギリス海軍が直面した財政難と新たな脅威への対応として、既存の駆逐艦を有効活用して誕生した艦です。15型に比べて性能面では劣るものの、当時のイギリス海軍にとって必要不可欠な存在でした。これらの改装艦は、新型艦が配備されるまでの間、対潜戦力の穴を埋める重要な役割を果たしました。

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