1893年のメジャーリーグベースボール

1893年のメジャーリーグベースボール（MLB）は、様々な出来事があった年です。ナショナルリーグでは、ボストン・ビーンイーターズ（後のブレーブス）が1891年から3年連続、6度目の優勝を果たし、その強さを見せつけました。

ボストン・ビーンイーターズの黄金時代

1890年代のビーンイーターズは黄金時代を謳歌していました。フランク・セレー監督の下、1891年から1893年にかけてリーグ3連覇、さらに1897年と1898年にもリーグ2連覇を達成し、19世紀中に合計8度のリーグ優勝を飾っています。投手陣には、キッド・ニコルズ、ジャック・スティベッツという2人のエースが君臨し、打線にはヒュー・ダフィー、トミー・マッカーシーといったスター選手が名を連ねていました。

個人タイトルの行方

この年の個人タイトル争いでは、フィラデルフィア・フィリーズのエド・デラハンティが最多本塁打（19本）と最多打点（46打点）の二冠を獲得しました。また、同じくフィリーズのサム・トンプソンが最多安打（222本）を放ち、ビリー・ハミルトンが打率.380で首位打者に輝いています。一方、投手部門では、ピッツバーグ・パイレーツのフランク・キレンが最多勝（36勝）を、ニューヨーク・ジャイアンツのエイモス・ルーシーが最多奪三振（208奪三振）を記録しました。優勝チームであるビーンイーターズからは、ハーマン・ロングが最多得点（149得点）を記録したのみでした。

トミー・マッカーシーの活躍

トミー・マッカーシーは、ユニオン・アソシエーションのボストン・レッズでプロとしてのキャリアをスタートさせましたが、目立った成績を残すことはできませんでした。その後、ボストン・ビーンイーターズ、フィラデルフィア・フィリーズを経て、1888年にアメリカン・アソシエーションのセントルイス・ブラウンズに移籍。ここで外野手としての才能を開花させ、俊足と巧打を武器にレギュラーの座を掴みました。同年には109盗塁、106得点（資料によっては93盗塁、107得点）を記録し、以降7年連続で100得点以上を挙げる活躍を見せました。1890年には打率.350をマークし、俊足巧打の外野手としてその名を轟かせました。1891年にボストン・ビーンイーターズに移籍すると、1892年と1893年のリーグ優勝に大きく貢献。守備では、フライをわざとワンバウンドで捕球して併殺を狙うなど、トリッキーなプレーで相手を翻弄し、ファンを沸かせました。また、1試合6盗塁という記録も保持しています。生涯打率は.292（.294とする資料もあり）と3割には届かなかったものの、その功績が認められ、1946年に殿堂入りを果たしました。

年俸カットの実施

1893年は、メジャーリーグ全体で年俸カットが行われた年でもありました。対抗リーグが相次いで消滅し、単独リーグとなったにもかかわらず、前年のナショナルリーグ12球団の営業成績は軒並み低迷。その原因は、2つのリーグとの対立が激化する中で、選手の年俸が高騰したことにありました。そこで、各球団のオーナーたちはシーズン終了後にニューヨークに集まり、1893年の年俸を一律40％引き下げることを決定しました。

規則の改正

この年には、投球規則にも大きな変更が加えられました。従来の投手ボックスが廃止され、新たに投手板（12インチ×4インチ）が設置され、投手は投球完了まで軸足を投手板に触れていなければならない、という現在に近い形になりました。また、投手板から本塁までの距離が、従来の50フィートから60フィート6インチに拡張されました。打者のバットについても、従来は一部を削って平面にすることが認められていましたが、この年からは丸い木製の一片でなければならない、と改正されました。ただし、長さに関する制限は設けられず、2年後に長さ制限が追加されました。

参考資料
『アメリカ・プロ野球史』鈴木武樹　著　57P参照　　1971年9月発行　　三一書房
『米大リーグ　輝ける1世紀　～その歴史とスター選手～』≪1893年≫36P参照　週刊ベースボール　1978年6月25日増刊号　ベースボールマガジン社
* 『米大リーグ　輝ける1世紀　～その歴史とスター選手～』≪トマス・マッカーシー≫37P参照

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