1930年の日本公開映画

1930年 日本公開映画

1930年（昭和5年）は、日本の映画界にとって活気あふれる一年でした。この期間には、国内外から非常に多くの作品が日本のスクリーンに届けられ、観客を魅了しました。提供された情報からは、その多様なラインナップの一端を知ることができます。この年は、無声映画が依然として主流であった一方で、トーキー（発声映画）が本格的に普及し始める過渡期にあたり、様々な形式の作品が混在していました。

特に注目されるのは、アメリカやドイツなどからの輸入映画の多さです。ハリウッドで製作された大作から、ヨーロッパの芸術性の高い作品まで、多岐にわたるジャンルの映画が公開されました。また、日本の映画製作も盛んであり、現代劇から時代劇まで、数多くの作品が生まれました。

各月に目を向けると、そのバラエティの豊かさがより明確になります。

年の始まりである1月には、ドイツ映画の傑作とされる『アスファルト』が公開されました。この作品は、その年のキネマ旬報ベスト・テンにおいて、外国無声映画部門の第1位に輝くなど、高い評価を受けました。アメリカからは『アンナ・カレニナ』やミュージカル映画の先駆けである『ブロードウェイ・メロディー』などが公開され、早くも話題作が並びました。日本映画では『結婚学入門』や『森蘭丸』などが封切られています。

2月には、ヴィルヘルム・パプスト監督のドイツ映画『パンドラの箱』が公開され、ルイーゼ・ブルックス演じるヒロイン像が議論を呼びました。アメリカ映画では『シャーロック・ホームズ』などが登場。そして、日本映画史にその名を刻む『何が彼女をさうさせたか』が公開され、キネマ旬報ベスト・テン日本現代映画部門の第1位に選ばれるなど、社会派作品として大きな反響を呼びました。

3月には、日本の映画製作がより活発になります。『朗かに歩め』、『進軍』、『藤原義江のふるさと』といった作品が公開され、それぞれ独自の作風を見せました。海外からは『ハリウッド・レヴィユー』など、当時のエンターテイメント性の高さを感じさせる作品が上陸しました。

4月には、ドイツの心理劇『帰郷』がキネマ旬報ベスト・テン外国無声映画部門の第3位にランクインしました。日本映画では、小津安二郎監督のコメディ『落第はしたけれど』や、溝口健二監督の『麗人』など、巨匠たちの作品が公開されています。

5月には、日本時代劇の傑作とされる『続大岡政談 魔像篇第一』が公開され、キネマ旬報ベスト・テン日本時代映画部門で第1位を獲得しました。これは、当時のチャンバラ映画の隆盛を象徴する一作と言えるでしょう。海外からは『都会の女』などが公開されました。

夏に向けては、7月に日本時代劇の佳作『素浪人忠弥』がキネマ旬報ベスト・テン日本時代映画部門の第3位に入りました。同じく7月には、小津安二郎監督のサスペンス『その夜の妻』も公開されるなど、この時期も日本映画の質の高さが伺えます。

秋になると、10月には特に注目すべき作品が集中して公開されました。アメリカの反戦映画の金字塔『西部戦線異状なし』は、キネマ旬報ベスト・テン外国発声映画部門の第1位に選ばれ、日本でも大きな衝撃を与えました。ソ連のドキュメンタリー『アジアの嵐』も外国無声映画部門で第2位にランクインし、異文化への関心の高さを示しました。日本映画では、伊藤大輔監督の『旋風時代』が時代劇部門で第2位に選ばれるなど、この月は国内外の傑作が目白押しでした。

また、この年のキネマ旬報ベスト・テン外国発声映画部門では、9月公開のアメリカ映画『ラヴ・パレード』が第2位に選ばれており、トーキー作品への評価も高まっていたことがわかります。11月には、田坂具隆監督の日本映画『若者よなぜ泣くか』が現代映画部門で第2位となり、この部門では2月公開の『何が彼女をさうさせたか』と共に、当時の社会状況を反映した作品が評価されていました。さらに、12月公開の『お嬢さん』も同じく現代映画部門の第2位タイにランクインするなど、年末まで質の高い日本映画が公開され続けました。

全体を通して見ると、1930年は日本映画、輸入映画ともに非常に活発な年であり、特にアメリカとドイツからの作品が市場を賑わせました。無声映画の円熟期と発声映画の黎明期が交錯する時代であり、多様な表現手法の作品に触れる機会が多かったと言えます。キネマ旬報ベスト・テンに選ばれた作品群は、当時の批評家や観客に高く評価された作品であり、今日でも日本映画史や世界映画史を語る上で欠かせないものばかりです。これらの作品群を通して、1930年の日本の映画文化の息吹を感じ取ることができるでしょう。

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