1952年のロードレース世界選手権

1952年のFIMロードレース世界選手権は、第4回大会として5月から開催されました。スイスのブレムガルテンを皮切りに、スペインのモンジュイックで最終戦を迎えるまで、全8戦にわたる熱戦が繰り広げられました。

このシーズン最大のトピックは、それまで参加が認められていなかったドイツ人ライダーとドイツメーカーの参戦解禁です。戦前に活躍したBMWはワークス参戦を見送りましたが、DKWとNSUが新たに選手権に参戦を開始。この年からドイツGPがカレンダーに加わり、40万人の観客を集めるなど、大きな盛り上がりを見せました。一方、前年開催されたフランスGPはカレンダーから外れたものの、全レース数は前年と同じ8戦となりました。

注目すべき出来事の一つとして、第6戦アルスターGPの500ccクラスで、当時18歳だったジョン・サーティースがグランプリデビューを果たしたことが挙げられます。

500ccクラスでは、前年圧倒的な強さを誇ったノートンが苦戦を強いられるシーズンとなりました。チャンピオンのジェフ・デューク、オーストラリアのケン・カバナに加え、新戦力としてデイブ・ベネットを迎えましたが、ベネットは開幕戦のスイスGPでクラッシュし、悲劇的な死を遂げました。ベネットのマシンを受け継いだレイ・アムも、ドイツGP予選で負傷。さらにエースのデュークも、選手権の合間に出場したレースで足首を骨折し、シーズン後半を棒に振ることとなりました。

対照的にジレラはシーズンを通してマシンの改良を続け、シーズン終盤には最高出力55ps/10000rpmにまで到達。マセッティは開幕戦をリタイヤ、マン島TTレースにも出場しませんでしたが、オランダとベルギーでデュークを破り優勝。デュークの負傷欠場となった後半戦でも2度の2位表彰台を獲得し、1950年に続いて2度目のタイトルを獲得しました。この勝利により、マセッティは最高峰クラスで複数回タイトルを獲得した最初のライダーとなりました。

ノートンに代わりジレラのライバルとなったのが、レスリー・グラハムの手によって進化を遂げたMVアグスタです。グラハムはイタリアGPでMVアグスタにとって500ccクラス初優勝をもたらし、最終戦スペインでも勝利を収めました。しかし、マセッティとのポイント差が3点となり、ランキング2位に終わりました。

350ccクラスでは、前年に続きノートンとジェフ・デュークが圧倒的な強さでシーズンを支配しました。デュークは開幕から4連勝を飾り、後半戦3レースを欠場したにもかかわらず、見事タイトルを獲得しました。残る3戦の優勝者もすべてノートンのライダーで、アルスターGP優勝のケン・カバナはグランプリで優勝した最初のオーストラリア人、イタリアGP優勝のレイ・アムはグランプリで優勝した最初のローデシア人となりました。

250ccクラスは、前年チャンピオンのブルーノ・ルフォではなく、エンリコ・ロレンツェッティとファーガス・アンダーソンが主役となりました。アンダーソンが開幕2連勝でリードを奪いましたが、ロレンツェッティがオランダGPで初優勝。ドイツGPでは、ルディ・フェルデンハイヤーがDKWでグランプリ初優勝、同時に2ストロークエンジンのマシンによるグランプリ初優勝も達成しました。アルスターGPで2位となったロレンツェッティがポイントで逆転し、最終戦ではヴェルナー・ハースとの接戦を制し、初タイトルを獲得しました。

125ccクラスでは、これまで続いたモンディアルの支配が終わりを告げました。開幕戦でMVアグスタのセシル・サンドフォードがグランプリ初優勝を飾り、オランダ、アルスターGPでも勝利してチャンピオンに輝き、最小排気量クラスで初となるイタリア人以外によるチャンピオン誕生となりました。ドイツGPではヴェルナー・ハースがNSUに、イタリアGPではエミリオ・メンドーニがモリーニに、それぞれグランプリ初優勝をもたらしました。

このように、1952年シーズンは、ドイツ勢の参戦、新たなライダーやメーカーの台頭、そして伝統的な強豪チームの苦戦など、様々なドラマが詰まった、記憶に残るシーズンとなりました。各クラスで繰り広げられた激しい戦いは、モーターサイクルスポーツ史に大きな足跡を残しました。

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