1954年ベルギーグランプリ

1954年ベルギーグランプリ：スパ・フランコルシャンでの熱戦

1954年6月20日、ベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットで、F1世界選手権第3戦、1954年ベルギーグランプリが開催されました。当初予定されていたオランダグランプリがキャンセルされたため、このレースはヨーロッパラウンドの開幕戦という重要な位置づけとなりました。

期待と波乱の出場陣

このレースでは、メルセデスの新型マシンがまだ登場しておらず、前戦アルゼンチンGPに引き続き、ファン・マヌエル・ファンジオがマセラティを駆る姿が見られました。マセラティ陣営は、ファンジオに加え、オノフレ・マリモン、セルジオ・マントヴァーニのワークスドライバー3名体制。スターリング・モス、プリンス・ビラ、ロベルト・ミエレスといったプライベーターも参戦し、混戦が予想されました。

フェラーリ陣営は、ミッレミリアでの負傷から復帰したジュゼッペ・ファリーナとホセ・フロイラン・ゴンザレスの強力な布陣。さらに、このレースからワークスドライバーとしてモーリス・トランティニアンが加入し、マイク・ホーソーンと共にチームを盛り上げました。地元ベルギーからは、ジャック・スウォーターズがエキュリー・フランコルシャンから参戦しました。

ゴルディーニはジャン・ベーラに加え、地元出身のポール・フレールとアンドレ・ピレットの3台体制で挑みました。一方、ランチアは新型マシンの開発遅れにより、前年度チャンピオンのアルベルト・アスカリは欠場となりました。

予選：ファンジオの圧倒的な速さ

予選では、ファンジオが1951年にアルファロメオで記録したコースレコードを更新する4分22.1秒という驚異的なタイムを叩き出し、ポールポジションを獲得しました。ゴンザレスは1.5秒差の2位、ファリーナはマシンのセッティングに苦しみ、ゴンザレスから2秒以上遅れて3位となりました。

決勝：ドラマチックな展開と若手ドライバーの躍進

決勝レースは、予選出場14台に加え、映画「ザ・レーサーズ」の撮影のため、エマヌエル・ド・グラッフェンリードがマセラティA6GCMで参加しました。

スタートでは、ファンジオが出遅れ、ゴンザレスとファリーナが先行。しかし、1周目にゴンザレスがコンロッド破損でリタイア。トップに立ったファリーナでしたが、3周目にファンジオが逆転。その後、10周目にファンジオのフロントサスペンションが故障し、再びファリーナがトップに立ちましたが、14周目にファリーナのエンジンが故障してリタイア。結局、ファンジオが落ち着き払った走りで優勝を掴みました。

2位にはフェラーリ加入後初レースにして表彰台を獲得したトランティニアン、3位にはモスが入り、ともに初の表彰台を飾りました。ミエレスのマシンが炎上するアクシデントもありましたが、ミエレスは軽傷で済みました。

レース結果とその後

このレースで、トランティニアンとモスは初表彰台、モスとピレットは初ポイントを獲得しました。ファンジオは自身11回目のファステストラップを記録し、最多記録を更新しました。また、このレースがファリーナの1954年シーズンの最後のレースとなりました。

このベルギーグランプリは、ファンジオの圧倒的な実力、新鋭ドライバーの台頭、そして予期せぬアクシデントが絡み合う、記憶に残る一戦となりました。

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