1955年のロードレース世界選手権

1955年FIMロードレース世界選手権：激動のシーズン

1955年のロードレース世界選手権は、数々のドラマと事件に彩られたシーズンとなりました。5月にスペイン・モンジュイックで開幕し、イタリア・モンツァで幕を閉じました。前年よりも1戦少ない全8戦で争われ、各クラスで熾烈な戦いが繰り広げられました。

モータースポーツ界を震撼させた事故と、その影響

このシーズンを語る上で避けて通れないのが、6月に発生したル・マン24時間レースでの大惨事です。メルセデスの車が観客席に突っ込み炎上する事故は、ドライバーと観客合わせて81名もの犠牲者を出しました。このモータースポーツ史上最悪の事故は、世界中に衝撃を与え、モータースポーツの危険性を改めて認識させる結果となりました。

多くの国でモータースポーツに対する批判が高まり、スイスでは国内でのレース開催を禁止する法案が可決されました。そのため、1949年の選手権開始以来、その一戦として開催されてきたスイスGPは、この年から姿を消すこととなりました。また、開催地が転々としていたドイツGPは、この年からニュルブルクリンクの22.8kmの北コースを舞台に開催されることとなりました。

オランダGPでのボイコット騒動

オランダGP（ダッチTT）では、深刻な問題が発生しました。長年、低額なスターティングマネーに不満を持っていたプライベートライダーたちが、ついに反旗を翻したのです。彼らの要求が受け入れられないと判断したライダーたちは、レースのボイコットを宣言。350ccクラスでは、十数名のライダーがパレードのようなスロー走行で1周した後、ピットインするという事態となりました。

この騒動は、ジレラのワークスライダーであるジェフ・デュークとレグ・アームストロングがプライベーターたちを擁護したことでさらに拡大しかねない状況となりました。しかし、2人はレースのボイコットには反対の立場でした。主催者側は、500ccクラスへの波及を恐れて、ライダーたちとの話し合いに応じ、スターティングマネーの増額を認めました。騒動は一旦収まりましたが、この事件はシーズン終了後も尾を引くこととなります。FIMは、争議に加わったライダーたち、デュークとアームストロングを含む多数のライダーに対し、翌年1月1日から6ヶ月間の出場停止処分を下しました。この処分により、デュークとアームストロングは、ジレラと共に1956年シーズンの開幕戦から2戦を欠場することになったのです。

各クラスの戦いを振り返る

500ccクラス

ジレラは、チャンピオンのジェフ・デュークを中心に盤石の体制でシーズンに臨みました。しかし、ランキング2位だったレイ・アムがグランプリシーズン前に事故死するという悲劇に見舞われ、MVアグスタに移籍予定だったアムに代わり、ウンベルト・マセッティがジレラに挑戦する構図となりました。開幕戦スペインではアームストロングが勝利しましたが、その後はデュークが圧倒的な強さを見せつけました。第2戦フランスから第6戦オランダまでの5戦中4勝を挙げ、唯一敗れたベルギーでもチームメイトのコルナゴが勝利しました。アルスターGPでは、金銭的なトラブルによりジレラチームが欠場したため、デュークもアームストロングもレースに出場しませんでした。しかし、この時点でデュークの3年連続チャンピオンは確定しました。

350ccクラス

500ccクラスではジレラに敗れたモト・グッツィでしたが、350ccクラスではその実力を遺憾なく発揮しました。全戦勝利という圧倒的な強さでシーズンを制しました。マン島の250ccクラスでGP初優勝を飾ったビル・ロマスも、350ccクラスでも活躍し、安定した走りでチャンピオンを獲得しました。

250ccクラス

NSUがワークス参戦を中止したため、250ccクラスは混戦模様となりました。全5戦で5人の異なる勝者が誕生しました。ビル・ロマス、ヘルマン・パウル・ミューラー、ルイジ・タベリ、ジョン・サーティース、カルロ・ウビアリと、様々なライダーが優勝を飾りました。最終的にロマスがタイトルを獲得したかに見えたものの、オランダGPでのルール違反により失格となり、ミューラーが45歳にして最年長チャンピオンとなりました。

125ccクラス

NSUの撤退により、125ccクラスはMVアグスタが支配しました。ルイジ・タベリ、カルロ・ウビアリらの活躍により、MVアグスタはシーズン全勝という偉業を達成しました。

まとめ

1955年シーズンは、ル・マン24時間レースの大惨事、オランダGPでのボイコット騒動、そして各クラスで繰り広げられた激しい戦いと、多くの出来事が凝縮された年でした。このシーズンは、モータースポーツの歴史に大きな足跡を残すこととなりました。

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