1957年の日本公開映画

1957年（昭和32年）に日本国内で商業的に公開された映画作品の一覧は、当時の日本映画界と外国映画受容の状況を映し出す貴重な記録です。この年、日本各地の映画館では、国内外から実に多様な作品群が観客に届けられました。年間を通して活況を呈した公開リストからは、当時の映画文化の厚みが感じられます。

特に外国映画では、アメリカ合衆国製作の作品が圧倒的に多く、様々なジャンルのエンターテインメントが紹介されました。1月には『命知らずの男』や『友情ある説得』といった作品が登場し、西部劇の『テーブル・ロックの決闘』も公開されました。2月には『インカ王国の秘宝』や『やさしく愛して』、大空のスペクタクル『大空の凱歌』などが続きました。春先にかけても『追想』や『荒鷲の翼』、『三人のあらくれ者』、『ロケット・パイロット』などバラエティ豊かな作品が並びました。5月には『雨を降らす男』、『無法の王者ジェシイ・ジェイムス』、『機関車大追跡』といった作品が公開され、初夏には『島の女』、『七人の無頼漢』といった作品が登場しました。そして7月には西部劇の傑作と名高い『OK牧場の決斗』が公開され大きな話題となりました。夏休み期間には『翼よ! あれが巴里の灯だ』や『昼下りの情事』、ミステリーの雰囲気も漂う『金髪の悪魔』といった作品が観客を惹きつけました。秋以降も『赤い矢』、『決断の3時10分』、『パリの恋人』といった注目作が続々と公開され、10月には『めぐり逢い』、11月には『千の顔を持つ男』、『底抜けふんだりけったり』、『間奏曲』、『南部の反逆者』、『赤い河の逆襲』、『イグアナの夜』、『陽はまた昇る』など、多岐にわたるジャンルの作品が公開されました。年末の12月には、後に映画史に残る傑作として語り継がれる『戦場にかける橋』（イギリス/アメリカ合衆国合作）や『現金に体を張れ』、『サヨナラ』といった話題作が封切られ、年の瀬まで映画ファンの関心を集めました。

アメリカ映画以外にも、ヨーロッパ各国の作品が紹介されました。イタリアからは、フェデリコ・フェリーニ監督の感動作『道』（5月）や、ジュリエッタ・マシーナ主演の『カビリアの夜』（11月）といった名作が公開され、高い評価を得ました。フランスからは、ヴィクトル・ユーゴーの小説を映画化した『ノートルダムのせむし男』（3月）や、『遥かなる国から来た男』（2月）、『罪と罰』（4月）、『リラの門』（10月）などが公開され、文化的な深みを持つ作品群が紹介されました。イギリスからは『二十七人の漂流者』（4月）や、年末には『菩提樹』（12月）も公開されています。さらに、スウェーデン映画の『夏の夜は三たび微笑む』（2月）もリストに見られ、当時の日本が多国籍な映画文化を取り入れていたことが伺えます。

一方、日本映画もこの年、数多くの話題作を生み出しました。1月には黒澤明監督によるシェイクスピア翻案『蜘蛛巣城』が公開され、その革新的な映像表現が注目されました。また、小津安二郎監督の『東京よいとこ』や、今井正監督の社会派ドラマ『米』、川島雄三監督の傑作コメディ『幕末太陽傳』（7月）など、邦画界を代表する巨匠や気鋭の監督たちによる多様なジャンルの作品が次々と公開されました。春には『ジャズ娘誕生』、『浪人街』、『雪国』といった作品が公開され、特に東宝創立25周年記念作品である『明治天皇と日露大戦争』（4月）は大きなスケールで描かれました。5月には成瀬巳喜男監督の『あらくれ』や『永すぎた春』、6月には『異母兄弟』、7月には『大当り三色娘』、『琴の爪』、8月には『阿波おどり 鳴門の海賊』、『憲兵とバラバラ死美人』、『大忠臣蔵』、『水戸黄門』、『白夜の妖女』、9月には『挽歌』、『爆音と大地』、『鷲と鷹』、10月には『太夫さんより 女体は哀しく』、『喜びも悲しみも幾歳月』、11月には『気違い部落』、そして年末の12月には石原裕次郎主演の大ヒット作『嵐を呼ぶ男』が公開されるなど、年間を通して邦画の活力が感じられます。

このように1957年は、日本映画が多様なジャンルとテーマに取り組みつつ、同時に世界各国の優れた映画が積極的に紹介された年でした。この公開リストは、当時の日本の映画市場が非常に豊かで国際的な側面を持っていたことを物語っており、映画史における興味深い一ページを形成しています。

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