1962年オランダグランプリ

1962年オランダグランプリ：新たな挑戦とイギリス勢の台頭

1962年5月20日、オランダのザントフォールト・サーキット。11回目のオランダグランプリ、そして22回目のヨーロッパグランプリの栄冠をかけた戦いが、F1世界選手権の開幕を飾りました。1.5Lエンジンのレギュレーション2年目ということもあり、各チームは最新鋭のマシンを投入し、激しい戦いを繰り広げました。

技術革新と勢力図の変化

前年は苦戦したイギリス勢が、このレースで存在感を示しました。コヴェントリー・クライマックス社はV型8気筒のFWMVエンジンを、BRMはP57（P56エンジンの改良型）を投入。特に注目を集めたのはチーム・ロータスの25で、F1マシンとして初めてモノコック構造のシャシーを採用するという画期的な試みでした。ローラもバウメーカーの後援を受けて初のF1マシンMk4を開発。さらに、ジャック・ブラバムはドライバー兼コンストラクターとして参戦を開始し、自らのチームを率いることになります（このレースでは、自製マシンの完成を待つ間、ロータス24を使用）。ドイツのポルシェも空冷水平対向8気筒エンジンを搭載した新型マシン804を投入し、戦いをさらに盛り上げました。一方、前年圧倒的な強さを見せたフェラーリは、チーム首脳陣の離脱や労働争議による開発遅延により、前年型マシンの改良版しか投入できず、苦戦を強いられました。

スターリング・モスは、開幕直前のレースで大きな事故に遭い、重傷を負ってしまいました。この事故により、彼はF1界から引退することになります。彼の不在は、このレース、ひいてはF1界全体にとって大きな損失でした。

予選と決勝

予選では、F1初参戦のローラを駆るジョン・サーティースがポールポジションを獲得しました。決勝レースは、BRMのグラハム・ヒルが初優勝を飾ります。これはBRMにとって1959年オランダGP以来の勝利でした。2位にはチーム・ロータスのトレバー・テイラー、3位には前年チャンピオンのフィル・ヒルが入りました。グラハム・ヒルの勝利は、BRMチームの復活を告げるものとなりました。激しい戦いの末、彼は27秒差で2位以下を引き離し、圧倒的な力を見せつけました。

レース詳細

レースは80周、335kmに渡り、様々なドラマが展開されました。ジム・クラーク、グラハム・ヒル、フィル・ヒルなどがラップリーダーの座を争いました。特にグラハム・ヒルの安定した走り、そしてBRMマシンの信頼性の高さが、彼の勝利に大きく貢献しました。このレースは、イギリス勢の台頭、そしてF1マシンの技術革新が著しい進歩を遂げていることを示す象徴的なレースとなりました。新技術、そして若手の台頭が、F1という世界の勢力図を大きく塗り替えたと言えるでしょう。

結果

このレースの結果は、F1世界選手権の今後の展開を占う重要な指標となりました。イギリス勢の活躍は、今後の開発競争の激化を予感させ、各チームはさらなる技術革新を進めていくことになります。この1962年オランダグランプリは、F1の歴史において重要な転換点となったレースと言えるでしょう。

参考資料

林信次『F1全史 1961-1965』ニューズ出版、1997年。ISBN 4-938495-09-0。
STATS F1

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